妄想の地図帳
 「ひぐらしのなく頃に」が好きなおっさんが、二次創作やオリジナル物語を書いたりするとかしないとか。
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オリジナルSS「スネルジア」
 みなさまこんにちは。
最近ちょっと立て込んでいて、あたふたしております。
そんな中、今日はオリジナルSS「スネルジア」をアップしてみました。
以前友人が開催した、ちょっとしたイベントに提出したSSを、少しだけ修正した物です。
圭一も魅音も出て来ませんが、短いのでちょっぴり読んで下さると嬉しいです。
ではでは。

 スネルジア

 ――どうしてこう、この道は混むのだろうか。
 幹線道路だからと言われれば、そりゃあそれまでの話かも知れ無い。けどな、三車線もあるんだぞ? もう少し何とかならないのか。
 毎日営業で外を飛び回っている俺の身にもなって欲しいもんだ。
 カスタマーからは無理難題を押し付けられ、一人になれる移動の時間すらも、この渋滞地獄だ。
 飯を喰ったらケツからクソが出る。じゃあ、ストレスってのは何処から出て行くんだ?
 あぁ、オレンジ色の夕日が非道くうっとうしい。……気持ち一つで随分見え方も変わるんだろうけどな。
 煙草の一本にでも火をつけて紫煙を燻(くゆ)らせれば、多少なりとこのイライラも晴らせるんだろうが、生憎それも出来ゃしない。
 あろう事か社長のやつ、先月から全社用車を禁煙にしやがった。
 ……まったくやってられない事だらけだ。
 我が愛しき相棒、オンボロ社用車の前には、バックドアに『○○食品販売 〇八×‐二五×‐五×××』と書かれた、白と黒の薄汚れたツートンカラーのバンが走って……いや、停まっていた。
 こいつも俺と同じような事考えてるのかね。
 お互いツマラねえ人生だよなあ。えぇ? おい。
 脳内でぼやいていると、それを責めるかの様に相棒のエンジン音がブオォと大きくなった。
 流石オンボロ。エアコンをつけただけで悲鳴を上げやがる。
 これから帰ってまた残業かと思うと、気が滅入る。
 まあ、いつものパターンだ。で、その後もいつも通り。
 短めの溜息を一つ漏らし、決め台詞。
「辞めちまおうかね……」
 オレンジ色に照らされる雲は、俺に何の感動も与えてはくれなかった。

 十分を費やして俺の相棒は五百メートルという偉大な距離を進み、やっと最大の難所、ファミレスが左手に見える交差点の先頭にまで辿り着いた。
 時速にして何と三キロ。ちなみに成人男性の歩く平均速度は。時速約四キロだ。
 ここを越えれば幾分流れは良くなる。何とか渋滞地獄の七合目に到着、といった所だな。俺はシートに身を預けて安堵の息を吐き、何とは無しに辺りを見渡した。
 左手の歩道を見やると、自転車にまたがった数人の中学生が賑やかにはしゃいでいた。
 ――俺にもあんな時代があったっけな――年寄り臭い思考に浸っていると、ふとその向こうにポツンと建っている倉庫が目に入った。
 はて? こんな倉庫、以前からあったっけか。
 倉庫には看板が付いていた。と、言う事は何かの店なのか?
 今まで数えたくも無い程この道を通って来たが、こんな店にはトンと気がつかなかった。
「……はす……はな?」
 手書きらしい字体のカタカナで「ハスハナ」と書いてあった。当然店の名前なのだろう。その看板には、羽の生えた人間と、羽の生えた……か、蛙? の絵が描いてある。
「オイオイなんの店だよ」
 しげしげとその『店』らしき倉庫を眺めていると、後ろから短めのクラクションが数度鳴らされハッと我に帰った。
 既に信号は青に変わっており、先ほどまで騒いでいた中学生も横断歩道を渡りきっていた。
「おっとと。コリャ失礼失礼」
 慌ててアクセルを踏みこむ。
 会社に帰って残業をこなすなら、直進が正解だ。
 なぜなら会社はこの先真っ直ぐにあるからだ。
 俺はウィンカーを炊いて左にハンドルを切る。
 正直、それほど「ハスハナ」が気になった訳でも無い。どちらかと言うと大して興味は無い。ハンドルを切ったのはちょっとした気まぐれ。
 ……イヤ、もっと正直に言ってしまおう。軽い現実逃避だ。
 兎に角。うだつの上がらない二十四歳男性独身営業マンは、己のちっぽけな探究心を満たす為、謎の店「ハスハナ」への冒険に旅立った訳だ。

 店の横にある一台分だけの小さな砂利の駐車場に車を止めて「ハスハナ」の中をそっと覗く。入り口の扉は大きなガラスがはめてある引き戸だったので、外から様子が伺えた。
 どうやらアジア系の雑貨店のようだ。
 ……正直少しがっかりした。
 もっとトンデモナイ店を期待していたんだがな。我ながら店の主人に対して失礼な思考だと思うが、まあ仕方が無い。俺はそういう男だ。
 何はともあれ折角来た事だし、少し寄って行く事にしよう。
 取っ手のくぼみに手を掛け、入り口の引き戸をソロソロと開けると、軽い鈴の音が店内に心地良く響いた。
「……こんにちわー」
 流石俺営業マン。客だと言うのについうっかり挨拶などしてしまった。
 ……だが店内からは何の反応も返って来ない。
 パッと見では俺以外客は居ないようだけれど、まさか店番も居ないのか?
 随分と無用心じゃないか。えぇ? おい。
 まあ冷やかし半分で来ている俺にとっては、変に商品を薦められる気遣いが無くて丁度良い訳だが。
 気を取り直し、店の手前側から商品を物色して行く事にした。

 またもや店主には失礼な言い方になってしまうが、「ハスハナ」は予想外にしっかりとしたアジア雑貨の店だった。
 俺はそれほどアジア雑貨の知識が有る訳でも、興味が有る訳でも無いが、そう思った。
 生活雑貨や衣服、灰皿に財布なども扱っており、狭い店内は所狭しとアジアンテイスト溢れる商品でごった返していた。
 そのくせ雑然とした感じは無く、むしろおもちゃ箱を覗いている時の様なちょっとした高揚感を感じた。
 へぇ、アクセサリー類も豊富に揃っているみたいだな。
 店内には鼻につかない程度の控えめなお香の香りが漂っていた。何の香りかなんて知りやしない。そこの樫の木のテーブルに陳列されているお香のうちのどれかだろうさ。
 店の備品だと思っていた、味のあるソファーにも値段が付いていたのにはちょっと驚いた。
 奥まで進み、レジカウンター周りの小物に目をやった時、思わずクスッと吹き出してしまった。
 擬人化された猫の小さな置物なんだけれど、ちょうど人間が椅子に座っている様な姿勢でカウンターに座っているんだ。それがズラッと並んでいる。
 ――ちょっと可愛いじゃねえか。さっきも言ったが、雑貨には大して興味の無い俺だが、これはちょっと気に入った。
 特にブチ模様のこいつなんか、かわい……あれ? 今カウンターの中で何かが……?
「うっ!」
 思わず声を出して驚いた。その拍子に手に持っていた猫の小物も落してしまった。
 
 居た! 人が居ました先生! いや先生って誰だよ?! 
 ……とっ、兎に角相当驚いた。

 ――おそらく店の人だろう。二十代らしきセミロングヘアの女性がカウンターの中で、椅子にもたれ掛かって、すうすうと寝息を立ててたのだ。
 俺は誰も居ないと決め付けていたので、相当にビビった。
 で、だ。俺の声と猫の小物が落ちた音で気が付いたんだろうな。その女性が目を覚ましたので、俺は更に焦った。
 「あ、あの、えっと」
 おいおい、別に何も悪い事はしちゃいないだろうが俺。なぜどもる? 何で罪悪感に襲われなきゃならんのだ。
 そんな俺を女性はキョトンとして見詰めていた。
 数瞬後『あ、そう言えば店番してたんだっけ』とやっと思い出したらしく、急にニコッと笑うとこう仰った。
「いらっしゃいませ~」
 ……いや、遅いから。
「い、いや、あはは。……あの、すみませんね。勝手に入っちゃって」
「いえいえ~。ゆっくり見て行って下さいね~」
 客が店に来て『勝手に入ってすみません』も無いもんだ。
 しかしそれを、『気にしないで良いですよ』と言わんばかりにしれっと受け流した彼女は大物だ。
 微妙に噛み合っていない二人の思考の差に俺は呆気に取られたが、全く悪びれた風の無い彼女の笑顔に、思わず笑いがこみ上げてきた。
「ははは」
「? あの、何か?」
「ああいえ。すみません。何でも無いです。くくっ」
 今度は彼女の方がキョトンと目を丸くすると、小首を傾げて俺を見詰めた。本当に天然なんだな。
 クリクリとした丸い瞳が可愛らしく、笑うと覗く――八重歯かね? も中々チャーミングだ。
「なかなかいいお店ですねぇ」
「んー、ありがとうございます。えっと、始めての方ですよね?」
「ええ。そこの道を走っていたら看板が目に入って。何のお店なのかなーって気になったから寄ってみたんです」
「ああ、そうなんですか~。ありがとうございますぅ」
 何とものんびりとした女性だ。お店の雰囲気と相まって、俺はすっかり心が和んでいた。
 仕事中はともかく、普段余り好んで人と話をするタイプでは無い俺が、まあ良くしゃべっていた。
 商品を手に取りながらあれこれと質問をしたり説明を聞いたり……。
 こんなにまったりした気持ちになったのっていつ以来だろうか?
 とりあえず残業の事は頭の隅っこでゴミ箱に放り込んでおいた。

 結局俺はさっきのブチ猫の置物を買って帰る事にした。
「それじゃ、また来ます」
「はい~お願いします。……あ、でも私今月末でここ辞めるんですよ~」
「えっ? あ、あぁ。そうなんですか……」
「あ、でもでも、お店はちゃんとありますから~。だからまた来て下さいね~」
 ははは、と乾いた笑いで応えながら、正直ガッカリした。包装紙に包まれた猫の置物が、何だか急につまらない物に思えてきた。
 仕事帰りの楽しみを見つけたと思ったのになぁ。上手く行かないもんだ。
「あ、はい……それじゃぁ」
 肩を落とし店の扉を開けて帰ろうとすると背中をトントンと叩かれた。
 振り返ると、彼女が何か小さな紙切れを持って立っていた。
「来月からはここで働くんです。良かったらこっちにも来て下さいね」
「え、あぁ名刺? ――Sinergia……スネルジア?」
 彼女に渡されたのは名刺だった。
 どうやらスネルジアと言うのは喫茶店の名前らしい。ふうん。柔らかいイメージの彼女には、喫茶店もきっと似合うだろうな。
 名刺の一番下に、あだ名が書いてあった。
『みっちゃん』
 そうか、みっちゃんて言うのか。――うん、何かこれも似合う気がするぞ。
「喫茶店なんですねぇ。えーと、名前から察すると、誰かと一緒に?」
「えっ?! すごいすごい良く分かりましたねぇ。ここ、友達のお店なんです。私はお手伝いなんですよ~」
「あぁ、やっぱり。スネルジアって『共同作業』とか『相乗効果』って意味だから」
 まあ偶然知っていただけなんだが、みっちゃんが目を丸くして凄い凄いと褒めてくれたので妙に照れた。
「あ、あははは。で、お友達も君と同じような感じの人なの?」
「え? うーん……尖ってます」
「と、尖ってる?」
 俺が怪訝な顔をすると、悪いイメージを与えてしまったと思ったみっちゃんは慌てて訂正をした。
「……あ、嘘です嘘です! えぇーっと、えと、シャ、シャープな感じですっ」
 上手い表現だと自画自賛したんだろう。
 みっちゃんは、満面の笑みでそう言い切った。
 やっぱりこの人、面白い。
「はははははっ。じゃあ今度の休みにでも探しにいきますよ。頑張ってください」
「は~い頑張ります。お待ちしてますね~」
 軽く会釈をして、今度こそ俺は扉を開けて店の外に出た。
 入ってきた時と同じく軽い鈴の音が清々しく心に響いた。
 ――来て良かった。
 俺にしちゃあ珍しく良い選択だったじゃないか。えぇ? おい。


 営業用バッグの中から両面テープを取り出して、新しい相棒「ブチ」をスピードメーターの上に貼り付けて座らせた。
 ……相変わらずとぼけた顔でのほほんとしていやがる。
「悪い客に買われちまったなぁ。えぇ? おい。――これからお前は俺と一緒に世間の厳しさを学んで行く訳だ。いつまでそんなのんびりと笑っていられるかねえ?」
 ブチは俺の脅しにも顔色一つ変えず、チンマリと座って笑っている。
 中々堂に入った営業スマイルじゃないか。
「……まあ、これからは渋滞も少しは我慢できそうだな」
 新しい相棒の頭を軽く弾いてからエンジンを掛けた。
 オンボロの古き相棒は咳き込みながらピストンを動かし始めた。
 来月の日曜日は「スネルジア」探しの冒険に行ってみるか……。
 オレンジから色を落して行く黄昏の空が、妙に心地よかった。


 ― おわり ―
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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【2008/08/13 21:14】 | # [ 編集]


>最近ちょっと立て込んでいて、あたふたしております。
うふふふふふふふh
あひゃひゃひゃひゃひゃh
ま・・・・・頑張れ!!何かは知らんが応援はしとるで!!!
【2008/08/13 21:26】 URL | けーすけ #- [ 編集]


こういう街の中心から外れた店ってなんとなく掘り出し物とかがありそうな雰囲気ですな。
ジブリの「耳をすませば」の地球屋を思い出しました。
こっちはアジアンテイストの店じゃないけど、感じる雰囲気はなんとなく同じな気がします。

ところで、なんとなく「ハスハナ」でググってみたら、この店実在するんですね岡山に。
本当に羽の生えた蛙のような生き物が看板にいたw
もしかしてコンボイさんの実体験とか?w
【2008/08/13 23:16】 URL | だいぶつ #gIYQI5Sw [ 編集]


>けーちゃん
あ、いやいや。盆の時期だから仕事が忙しくてあたふたしてるって意味なので(^^;
色々頑張るよ。迷惑掛けない方向で。もう掛けちゃってるけど。

>だいぶつさん
ハスハナありますw スネルジアは名前変えたんだけど、ハスハナ変えるの忘れてましたw
スネルジアもモデル有ります。
これ自体が、そこでのまあちょっとしたイベント用に書いたものだったので。
モデルは居ますが、僕の実体験じゃないですよwww
あくまで創作のお話ですねん。

【2008/08/14 14:20】 URL | cvwith #- [ 編集]


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Author:cvwith
岡山に生息。
カレーは混ぜてから食べる派です。
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を中心に、ショートストーリー(SS)を書いています。
「うみねこ」もちらほらとやってます。
いずれオリジナルも書いてみたいと野望を持っております。

メアド : kdksf1@mail.goo.ne.jp
「@」を半角にして、ご使用ください。
感想・ご意見・イラストなど随時激烈に大歓迎中です!



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