妄想の地図帳
 「ひぐらしのなく頃に」が好きなおっさんが、二次創作やオリジナル物語を書いたりするとかしないとか。
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ありふれた冬の日曜日 -前編-
 そいで持って今日はSSも更新です。
これも今までと同じく、昔公式に投稿したSSの加筆・修正版です。
先日載せたSSが母の日の物でありましたが、今回は時間を遡り、昭和五十九年の二月辺り、と想定したお話となっております。
惨劇は乗り越えた後ですね。
今回は前・後編で、コメディテイストとなっております。
後編も加筆・修正を加え、近日投稿させていただく予定です。
それではお時間ございました、どうぞご賞味下さいませ。
ありふれた冬の日曜日 -前編-


 二月某日、俺と魅音は薄暗い小屋の中で呆然と体操座りをしていた。
「参ったねぇ、圭ちゃん……」
「あぁ……参ったな。……なあ魅音、これも生き埋めって言うと思うか?」
「生き埋めってまでは悲観しなくてもいいと思うんだけどさ……とりあえず密室に幽閉ってとこだねぇ。ははは……」
「なんてこった……」
 俺たちは今、園崎邸の奥にある、物置小屋に閉じ込められてしまっていた。
 なぜそんな事になっちまったのかを説明するには、少し時間を遡らせて貰う必要がある。

-------------------------------------------------------

 昨夜から続いた雪は見事に降り積もり、俺たち部活メンバーの遊び心を刺激するのに十分な白銀のフィールドを作り上げた。
 園崎家の広い庭園で、俺達部活メンバーは熾烈な『雪合戦』を繰り広げていた。
 いや、珍しい事に魅音は抜けていたので、正確には部活メンバー全員じゃあないな。
 だからって訳でも無いけれど、今回は罰ゲーム抜きで行こうって事になった。

「へっへっへ。どうしたどうした沙都子。さっきからぶつけられっ放しじゃねえか。もう降参か?」
「何を言ってございますのかしら圭一さんは。これからが本当の勝負です事よ! 羽生さん、雪玉は小さくて結構ですから、もっと数を作ってくださいませ!」
「あうあうさーっ、なのです!」
「みー。ボク達を甘く見ると、痛い目をみるのです」
 へへっ。強がりを言ってはいるが、俺達が優勢なのは間違いない。
 沙都子達は盛り上がった雪山の裏に隠れ、劣勢の立て直しを図っている。
「はぅ~。雪まみれで強がる梨花ちゃん、かぁいいんだよ~~」
「へっ! それで隠れたつもりか梨花ちゃん、沙都子、羽入! 人数が少ないとは言え、俺と、かわいいモードレナのコンビに勝てると思ってるのかよ?」
「あっはは! そうだよそうだよ? 圭一君とレナのコンビは無敵なんだよっ!」
「行くぜレナ。こいつで一網打尽だっ」
「準備OKなんだよ! いっけぇ圭一君!」
「OKぃっ。うりゃあーーっ」
 俺は渾身の力を込めて超特大の雪玉を放り投げた。
 普通、雪合戦で使う雪玉って言ったら、野球ボールサイズを想像するだろ? まあ大きくてもソフトボール程度。
 だが俺が今投げたのは、雪ダルマの体程もあろうかって言う超巨大玉だ!
 新雪ではここまでの大きさにはできない。既に圧雪してあった雪を使った特別弾だぜ!
 そいつを沙都子陣営の上空へと放り投げるっ。

「いまだレナ! 撃ち抜けーーーっ」
「はーうーっ!」
 掛け声と共に、レナは通常サイズの圧雪玉を巨大圧雪玉に空中で撃ち込んだ。
 ――ただし、レナパンの威力で、だ!
 言うなればこいつは『レナパンショット』。レナの新必殺技、遠距離兵器だ。
 レナパンショットによって巨大圧雪玉は砕かれ、その破片は無数の雪玉となって上空から梨花ちゃん達を襲う!
 またまた新技、『レナパン流星弾』とでも名付けようか!
「うわわわっ」
「あうあうっ」
「み~っ」
 小山の向こう側で黄色い悲鳴が上がる。
 俺とレナは陣地の横に回りこみ、その狼狽振りをたっぷりと堪能してやった。
 服の中に雪が入ったらしい羽入があぅあぅ言いながら走り回ってすっころび、雪山に突っ込んで漫画みたいな人形の穴を作った。
 俺とレナは腹を抱えて大笑い。これが勝利の味かっ! くぅ~、快感快感。

「はっはっはっは。ど~だ沙都子。今回は俺達の完っ全勝利だなぁ! その場所に追い込んだのは俺のトラップだぜっ。へへっ。今回はお前の十八番を奪わせて貰ったって事だな。あっはっはっはっ」
「み~。圭一に言われたい放題なのです」
「安心してくださいまし梨花。いくらボロボロになろうとも、最後に勝ち残った者だけを真の勝者と言うんですのよ」
 沙都子は頭から雪の塊をポンポンと払い落としながら負け惜しみを吐く。
「往生際が悪いぜ沙都子。誰がどう見てもお前達の負けだ。見てみろ。俺達とお前達、どっちが雪まみれだ? 誰の目にも勝敗は明らかだぜ!」
「あらあら。雪まみれな方が敗者なんですのね?」
「ああそうだ。雪合戦なんだぜ、当たり前だろ」
 ここで沙都子が不敵に笑う。
「それではやっぱりぃ――」
 沙都子が梨花ちゃんと羽入に目でサインを送る。
 何だ? まだ何か策があるというのか!?
「圭一さん達が敗者ではありませんのぉ!」

 言い放つと同時に三人は足元に隠してあった物をグイッと引っ張る!
 ロープだ!
 雪の中に隠れていたロープは、レーザー光線のように俺たちの足元へと一直線に迫ってくる。
 これが沙都子のラストトラップか!
 きっとこのロープに足を取られたが最後、宙吊りにされてしまうのだろう。
 くくくくっ。甘い、甘いぜ沙都子!
 想定外に追い詰められて最後の間合いを見誤ったな!

「レナ、ロープだ! 避けろ吊られるぞっ」
「大丈夫! 見えてるんだよ、だよ!」
 俺とレナは間一髪そのロープを躱す。
 ロープは俺達を越えて背後の大きな杉の木の後ろにある石灯籠へと伸びた。
「へっ! 残念だったな沙都子。これで万策尽きたなぁ」
 沙都子は何も言わずニヤリと笑い、八重歯をキラリと輝かせた。梨花ちゃんと羽入がハイタッチをしている。
 ぞくり。
 沙都子と勝負をする時にいつも感じる感覚が俺を貫いた。
 最後の最後、勝利を掴んだと確信した直後に感じる、この焦燥感。
  ――何故? 今回は最後の罠もかわした筈じゃないか。 

 その時俺達の背後で、ゴトンという音に続いてメキメキッと言う音が立て続けに聞こえた。
 思わず振り返ると、ロープが結ばれていた石灯籠が手前に引き倒され、杉の木に倒れ掛かっていた。
 杉の木は大きく揺すられグラグラと揺れた。
  これが罠? 何も起きな……
「! しまった圭一君逃げてぇっ」
 悲痛なレナの声を聞いたと思った時には遅かった。
 大きく揺すられた杉の木の枝には大量の、一夜で積もった大量の新雪が積もっていたのだ。
 そう、俺達は愚かにも……巨大な爆弾の下へ、自ら足を運んでしまっていたのだ。

 真っ白な、大きな雪の滝が俺たちに襲い掛かって……

「う、うおおおおおおお!!」
「は、はううううううぅー!!」
 ドサァッ! …………勝負あり、だ。


「をぉーーっほっほっほっほ♪ 良い様ですわよ圭一さん! レナさんも相棒に恵まれませんでしたわねぇ」
「あうあうあ~♪ 大逆転勝利なのですよ~」
「圭一もレナも、かわいそかわいそなのです」
 かろうじて首から上だけが雪山から生えている俺とレナの頭を、梨花ちゃんが満足気に雪を払いつつ撫で撫でする。
「くっそ~覚えてろよ沙都子ぉ! 次は絶対勝つからなあっ」
「あっはっはっは! 圭ちゃんもレナも見事にしてやられたねぇ」
 サクサクと雪を踏み鳴らしつつ、魅音がやっと現れた。
「あ! はう~魅ぃちゃん遅いよぉ。助けてぇ~」
「くっくっくっく。二人とも、あたしが居ないとてんで駄目だねえ?」
 魅音はニヤニヤ笑いつつ俺とレナの頬をプニプニと突く。
 その横では沙都子が口に手を当てて、高らかに笑っていた。
 くっそ~。この有様じゃあ何を言い返したって、負け犬の遠吠えにしかなりゃしねえじゃねえか!
「ほら沙都子。あんた達の完全勝利さ。武士の情けで掘り出してあげな」
 ポンと沙都子のお尻を叩く魅音。「しょうがないですわねえ」と、恩着せがましい顔をしながら、沙都子がスコップを手に取る。
「素敵なオブジェを壊すのは惜しいですけれど……部長の頼みとあっては仕方ありませんわね。助けて差し上げますわ」
「くっそお~っ。この屈辱は次の勝負で百万倍にして返して見せるからな!」
 サクサクと掘り返してくれるちびっ子三人組に、とりあえず精一杯の負け惜しみを返しておいた。
 顔に雪をひっかけられた。
 ガルルルと唸る俺の頭を、魅音がポンポンと叩く。
「まあまあ圭ちゃん。おじさんココア淹れてきたからさ、皆休憩にしてあったまろうよ」
「おおぉ? ど、どうしたんだ魅音。いつに無く気が利くじゃあねえか。風邪でも引いたのか?」
「あうあぅ、本当なのです。普段の魅音じゃないのです。きっと何かあったのです」
「あっるぇ~、そんな事言う? せぇっかく羽入の大好きなシューも用意してきたんだけどなぁ。そっかぁ、要らな」
「圭一は馬鹿なのです! 魅音はいつだって優しくて気が利いてエレガントでゴージャスな素敵なレディーなのです! そこで遭難するまで埋まってやがれなのですっ。あう!」
 ……スンゴイ早さで掌返したな羽入。初登場した時のあのモジモジキャラはどこに行っちまったんだよ……。

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 そんなこんなで、何とか掘り出して貰った俺達は、皆と一緒に庭の見える縁側でおやつタイムとなった。
 魅音ん家の庭は風情のある純和風な庭で、雪化粧がとても似合っていた。
 白い帽子を被った松の木。薄く氷を張ったひょうたん型の池。掻き分けられた通路に点々と配置された楕円形の踏み石。
 あ……さっきの石灯籠、ちゃんと戻しておかないとお魎のばあさんに大目玉喰らっちまうな。
 雪景色を眺めながら、気の合う仲間と一緒に啜る暖かいココア。ん~、贅沢だぜ。
 ちびっこトリオは、縁側でキャッキャと騒ぎながらシュークリームを頬張り、ココアを飲んでる。
 寒そうな気配なんてちっとも無い。全く元気なもんだ。
 俺とレナはと言うと、コタツで丸まってる。
 全身雪まみれで凍えてたんだから仕方ないだろ?
 ガタガタぶるぶるでニャーニャーって所だ。
 魅音もコタツ組だ。ココアを啜りながらレナを抱き寄せ、凍えた肩を擦ってやっている。
 レナが真っ赤な顔で、はうはうと照れまくっているのが可笑しい。

 しっかし沙都子め。どんどん手強くなっていきやがる。
 ありゃぁ将来どんな大人になるのかね。心配だぜ全く。
 羽入は縁側で足をパタパタさせながら、本当に嬉しそうにシュークリームをほおばっている。
 あ~あ~、口の周りがクリームだらけじゃねえか。
 猫舌の梨花ちゃんは熱いココアを冷まそうとフーフーしていたが、羽入の有り様を見ると溜息をつき、何か小言を言いながら口の周りを吹いてあげ始めた。
 羽入は悪びれた風も無く『おいしいですね、梨花♪』なんて言いながらフキフキして貰っている。
 なんだか子犬の様な耳と尻尾が羽入に生えてる様な気がするけど……気のせいか? 
 フキフキされながらもシューをモグモグし続ける羽入。「ちょっと食べるの我慢しなさいっ」と言いながら、生クリームを必死に拭き取る梨花ちゃん。まるで親子だ。
 レナが魅音に夢中で命拾いしたなぁ羽入に梨花ちゃん。そのシチュエーションは『お持ち帰りスペシャルコース』並みの可愛いらしさだぜ?

「それにしても珍しいな魅音。お前があんな熱いバトルに参加せずに裏方にまわるなんてよ。……あ、いや今度は嫌味とかじゃないぜ。お前が居たらもっと熱い戦いになっていただろうなと思うと、ちょっと残念でな」
「うんうん! 魅ぃちゃんが居てくれたら、きっともっと面白かったと思うんだよ。だよ」
 あっちの世界に飛んでいたレナが帰ってきて、相槌を打つ。
 俺達二人の言葉を聞き……魅音は不敵に笑った。
 その顔は、俺達の良く知っている顔。
 『部長』園崎魅音の顔だった!
「くっくっく。レナ~、圭ちゃぁ~ん。ま、さ、か、今日の勝負がさっきの雪遊び程度で終わりだなんて思ってる訳ぇ? だとしたら甘い、甘いねぇ!」
「なっ、まさかあれ以上の熱いバトルを用意しているのかよ魅音」
「圭ちゃ~ん。ここは泣く子も黙る豪雪地帯雛見沢だよ? 甘く見てもらっちゃあ困るねぇ。冬の遊びに関して『できない事は何も無い』ってのが売り文句さ。――圭ちゃん、レナ、沙都子に梨花ちゃんに羽入っ。日和(ひよ)ってる暇なんか無いよ。今度は『ソリ』で勝負だぁっ!」
 魅音はビシィッと人差し指を立て、舐めるように俺達全員の顔を指差した。
「おおおっソリだと? 一度やってみたいと思ってたんだよな。初体験だからハンデはあるが、その勝負受けてたつぜっ。皆、異論は無いよな?」
「異議なしだよ! だよ!」
「もちろんですわ。私の華麗な滑りを見せて差し上げましてよ!」
「み~。何人たりともボクの前は走らせないのです☆」
「あうあうっ。僕も初めてだけど負けないのですよ!」
「いよっし決まり! 本日の第2回戦は、ソリっ勝負だぁあっ!!」
「「「「「おぉおーーーっ!」」」」」
 全員の声がはもり、皆はコブシを突き上げた……いや、羽入はシューを突き上げた。
「昨日の内に裏山にちょっと細工しておいたからね、良い感じにジャンプ台も出来上がってるよぉ?」
「おおお~流石だぜ魅音。遊びに関しちゃ抜け目が無ぇ! 惚れ直したぜ。冬の女王と呼んでやろう」
「よ、喜んでいいのかどうか、良く分からない惚れ直されかただねえ…。ま、まあいいや。とりあえず一息ついたら、圭ちゃんには物置小屋からソリを持ってくるのを手伝ってもらうよー」
「おう、任せとけっ」

 この時は、これが悲劇の始まりだなんて想像もしていなかった。
 何も知らない俺はココアを飲み干した後、魅音と一緒に園崎邸の外れにある物置小屋へと向かったんだ……。

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「おわっ! 物置小屋ってここかよ!? 雪で三分の一くらい埋まっちまってるじゃねえか」
「あっちゃー。ちゃんと雪掻きはしてあったんだけど、昨日は結構降ったからねぇ。ま、でもこの位なら大丈夫大丈夫。長靴履いてりゃ問題ないって。さ、行くよ圭ちゃん」
「お、おい待てって魅音。俺はお前みたいに雪道になれてないんだって。……オッ……とと、くそっ。うわっ嵌った!」
 膝の下辺りまで積もった雪に何度も足をとられ悪戦苦闘しながらも、魅音に手を引いて貰ったりしながら何とか物置小屋の前まで辿り着く事が出来た。
 入り口の雪を二人で掻き分けて引き戸を開ける。
 カビ臭い匂いが漂ってくる小屋の中は、薄暗くて良く見えなかった。
 魅音が入り口の横にある照明のスイッチを入れると、天井の蛍光灯がチカチカと数度点滅した後、肌色の暖かい光が室内を照らし出した。
「おおー……。さすが雪国だなぁ。それっぽい道具が一杯並んでるぜ」
「なに言ってんだか。圭ちゃんも今はその雪国に住んでるんだからね。必要最低限の道具だけでも揃えておきなよ?」
「それはうちの脳天気な親に言ってくれ。今日も家を出るまでにどれほど苦労した事か……。お、これ忍者漫画で見た事あるぜ? 水の上を歩くやつだろ?」
「はいぃ? ……ぷっ。あっはっはっは! 圭ちゃんそりゃカンジキだよカ・ン・ジ・キ! 雪の上を歩く時に靴の下に付けるんだよ。まあ忍者のやつに似てるけどねー」
「おお、なるほど。んじゃこのタイヤが付いてない猫車みたいな物は何だ?」
「それはスノーダンプだよ。おじさん達はママさんダンプなんて呼んだりしてるけどね。これとショベルは最低限の必需品だね。何だったらうちにある古いヤツをあげようか?」
「おおっサンキュー助かるぜ。――だけど今はソリだソリっ。どこにあるんだよ魅音。早く持って帰って滑ろうぜ」
「確かこっちの奥に……お、あったあった。ほら圭ちゃんこの棚の上。おじさん手が届かないんだけど、圭ちゃん届くかい?」
「おー、待ってろ。……ん」
 今、天井のほうで何か物音が聞こえたような気がするぞ?

「? どしたの圭ちゃん」
「シッ! ……何か聞こえないか?」
「ふぇ? ……何も聞こえない――と思うけど……何処から何が聞こえるの?」
「……天井のほうでギシギシいってないか? ……ほら! 今聞こえたろう?」
 不定期な間隔ではあるが、確かに天井からギシギシ、ミシミシ、と嫌な音が聞こえて来る。
 魅音にもそれは聞こえたようだ。
「おい魅音、大丈夫なんだろうなこの物置小屋。雪の重みで潰れちまったら、さっきの沙都子のトラップどころの騒ぎじゃないぜ」
「だーい丈夫だって圭ちゃん。この程度の雪じゃあ、うちの物置はびくともしないって! 案外小心者だねぇ圭ちゃんは。くっくっくっく」
 俺の不安とは裏腹に、魅音はあっけらかんとしていた。
 雪国経験の差なので仕方ない事ではあるが、小心者と言われては素直に引き下がれない。
「べ、別にビビってなんかねえよっ。……でも天井の雪がさ、崩れた時に入り口塞がっちまったら出られなくなるだろ? それは大丈夫なのかよ?」
「安心しなって。ここいらの建物は合掌造りって言ってね。雪に強い屋根造りになってる。それにこの納屋の屋根の傾斜は、横に向かってついているから、雪が落ちるのも建物の横。入り口が埋まったりする事は絶対無いから……ってうわ?!」
 からかう様な目付きで魅音が言い終わりかけた時、天井からドドドーッ! と爆音が響いた。
 周りの除雪道具や物置棚がグラグラと揺れ、幾つかの小物が棚から落下してくる。
 (正直ビビリながらも)とっさに俺は魅音を庇い覆い被さったが、幸い俺達の上に大した物は降ってこなかった。

「大丈夫か魅音」
「へーきへーき。大袈裟だなあ圭ちゃんは。……へへへ、でもまあ、ありがとね」
 まあ、少しは男の面目も躍如できたようなので満足しておこう。ビビッた事は当然内緒だ。
「所で今のは、まさに天井の雪が雪崩を起こした音なのか?」
「だろうね。新雪だったし、今日は日が照ってるから溶け出して崩れたんだよ」
「そうか……すげえな雪って。まあいいや、さっさとソリを持って皆の所に帰ろうぜ! 雪が解けちまう」
「うん、そうしよ」

 棚の上にあるソリを降ろしている時、少しは気になっていたんだ。
 納屋の中が、入ってきた時よりも若干暗くなっている事に。
 でも、気のせいだと思って、あまり気に留めなかった。
 だけど……ソリを六つ重ねて納屋の入り口まで持ってきた時、それが気のせいではない事を悟った。
「……おい魅音。屋根から雪が落ちて来ても、入り口は絶対埋まらないんだったよな」
「……あ、あるぇ? そ、そのはずなんだけど……ねぇ……」
「じゃあ、この入り口の窓から見えている大量の雪は何なんだろうな」
「……な、何なんだろうねえ?」
「この窓ってさ、俺の顔の高さについてるよな? 魅音」
「そ、そうだよお? み、見れば分かるよ、おじさんにも。ウン!」
「……窓の外は完っ全に真っ白だなぁ。これってつまり、入り口は完全に埋まったって事かな? 魅音」
「ん、んーそうだねー圭ちゃん。察しが良いねえ。あっはっはっは」
 俺はとても優しい、まるで母親が我が子を慈しむかのような、それはそれは優しい笑顔で、魅音に最後の質問をした。
「そっか。じゃあ最後に聞かせてくれ。……この雪は、一体どこから突然降ってきたんだろうなぁ。魅音」
「…………や、屋根かな。かな。――な~んちゃ……って……は、はは……」
 頭の中で、プチッと音が聞こえた気がした。
「どおおおおおおおおーすんだよおおおおおおおおっ!!」
「知いぃらないよおおおおおおおおおお!!!」
 俺達二人は、同時にガックリとその場に膝を落とした。
 ――そして物語は冒頭へ戻るわけだ――

-------------------------------------------------------

 俺と魅音は体操座りをしたまま、ぼーっと雪に閉ざされた扉を見ていた。
 どの位の時間、こうしていたんだろう?
「……はっ! 駄目だ駄目だ。ほうけてる場合じゃねえよ。脱出の方法を考えないとこのまま日が暮れちまう。おい魅音、目を覚ませ! 口が半開きになってるぞっ」
「はっ?! ……あ、ああ。そ、そうだね。おじさんとした事が情けない。ゴメン圭ちゃんもう大丈夫だよ」
「ったく、頼むぜ魅音。俺一人じゃあ駄目でも、二人で力を合わせればきっと脱出できる」
 俺はグッと伸びをしてから頭を後ろに反らせ、目を閉じた。
 まずは落ち着け……。冷静になって今の状況を整理し、把握しよう。そこから解決の糸口を見つけ出すんだ。
 
 ――まず状況整理だ。
 俺達は、物置小屋に閉じ込められている。
 物置の屋根から滑り落ちた雪が、どういう訳か不運にも入り口を塞いでしまい、出入り口から出る事が出来なくなってしまったからだ。
 それでも扉が開いてくれるかもしれない、と何度か試してみたが扉はビクともしなかった。
 ……いや無理をすれば扉を開けるだけなら、出来そうではあった。
 だがそうすると表の雪が大量に雪崩れ込んできて、さらに状況を悪化させる可能性が非常に高い。
 兎に角入り口は駄目だ。
 
 入り口以外に小さめの窓が2つほどあった。
 だがどちらとも低めの位置に付いており、すでに雪で埋まってしまっている。
 やはり動考えても、完全に閉じ込められているみたいだ。
 ……くそっ。そうなると、やっぱり外部からの助けを待つしかないのか。
「魅音、時計持ってるか?」
「ううん、もって無いよ」
「俺もだ。俺達がこの納屋にソリを取りに来てからどの位時間が経ったと思う?」
「ええっと、二十分位じゃないかな。……そっか。もうそろそろ皆が異常に気づいてくれる頃かもしれないね」
「ああ。どうやら俺達は助けを待つしかねえ。下手に手を打つと、事態を悪化させかねないだろ」
「正論だね。……だけど圭ちゃん、おじさん達にとって悪いサイコロの目が2つ程出てるよ」
 渋い顔で、右手の指を二本立てる魅音に「どういう事だ?」と聞き、先を促す。
「まず一つ目。今日は詩音が居ない事。この物置小屋の位置はね、部活メンバーは多分誰も知らない」
「ちっ。園崎邸の広い敷地が裏目に出たって事か。でも、レナならお手伝いさんやお魎さんに聞いて、見つけ出してくれるんじゃないか? あいついざと言う時は鋭いからな」
「それが2つ目の悪い目。今日は妙子さんも沁子さんもお休みなんだよ。昨日からばっちゃがお母さんの家に泊まりに行っててね。臨時の休暇中なんだ」
「なっ……。くっそ! いよいよ持って逆風かよ」
 俺は不安と心細さを打ち消そうと、右拳を左掌にバシンと叩き付けた。
「圭ちゃん落ち着いて。大丈夫、皆を信じて待とうよ。きっと見つけてくれる。それにもし万が一皆に見つけて貰えなくても、明日の朝にはばっちゃが帰ってくるから。それまでの辛抱だよ」
「最低限命の保障はあるって事か。……まあ一安心だけど、最悪その場合一晩飯抜きかよ。…………ん、待てよ。何か飯なんかより、もっと大きな問題があるような気が…………あ……ま、待て魅音っ。そ、その場合もしかして……」

 大変な事に気づいちまった……。つ、つまり今晩はこの狭い納屋の中でだな……。
「ああ大丈夫大丈夫。ちょうどおじさんチョコレート持ってるからさ。圭ちゃんが明日猫耳メイドになってくれるって言うなら、半分分けて――」
「そうじゃねえ! だ、だからだなそ、その、こ、今晩だな」
「お風呂? その位は我慢しないといけないねぇ」
 わざとやってんじゃねえだろうな魅音?
「ちっがああああああうっ! お前と俺の二人っきりで夜を過ごすって事だろうがあぁっ!!」
 一瞬の沈黙。ゼィゼィと言う俺の荒い呼吸だけが物置の中に響く。
 目を点にして暫く考え込んでいた魅音から『チンッ』と言う音が聞え、頭の上に「!」マークが飛び出す。
 間髪入れず、ボンッと煙が上がって茹でダコになる魅音。

「ななななナナな、何言ってんのケ、圭ちゃ……って……え、あれ、あえええっ?! う、うそお??」
「嘘も何もそう言う事だろうが! って赤くなるんじゃねえっ。変に意識するなっ!」
「けケけ圭ちゃんが先に言い出したんでしょお!? 変な事言うから赤くなるんじゃんっ!」
 お互いにガルルルと唸りながら喧嘩腰で睨み合ってしまった。
 そうでもして誤魔化さないと、恥ずかしくてとてもまともに魅音を見れそうになかったからだ。
「……ま、まあ、あれだ。最悪の場合だからな。大丈夫さきっと皆がもうすぐ来てくれる。絶対だっ」
「そ、そうだね。あ、あははーー。……あー…………あのぅ、でもさ、圭ちゃん」
「『でも』は無ぇっ。絶対皆来てくれる!」
「い、いやあのそうじゃなくってさ……その……、ぁあアたしは、そのっ。べ、べ、別にそんなに嫌じゃあないよお!?」
「……う、ぇ……はぁ?! な、何を言ってんだ魅音?? お、おま、おま」
 おいおい魅音、何言ってるのか分かってんのか!?
 よよ、夜に男と女が二人っきりでやる事ったらおぉおお前……バッ馬鹿、俺たちゃ中学生だぞ? そ、そんな、イヤン。
 いつもの通り俺の考えは顔に出てるらしい。俺の顔を見て、魅音がまた頭から煙を吹いた。
「ふぇ……? あっ! あわわっわバカスケベ圭ちゃん! よよっ夜がとかじゃ無くて無くて!! その! 圭ちゃんと二人っきりがッテ事がだよっ」
「うぅっ……み、魅音。それは、それで……そのっ……なっなんか恥ずかしい事言ってないか?!」
「だだ、だって、今だって実際密室で、その……ふ、二人っきりな訳だし……」
「み、密室で……。二人っきり…」
 そんな言われ方をすると、もう意識してしまってどうしようも無くなってしまう。
 『二人っきり、二人っきり』
 それだけが頭をぐわんぐわんと回る。
 ああ、慣れない展開に頭の中が真っ白に……。


 っとその時!!


 おぉっと甘いよお二人さんなのですっ♪
 二人きりと思いきや 所がどっこいあうあうあうってな物なのですよ!!! 
 壁に耳あり障子に目あり。雛見沢にはオヤシロ様ありなのですよっ。
 ふっふっふっふ。まさかオヤシロ化した僕が見守っている(*意訳 ストーカー)とは、お釈迦様でも気がつくめぇなのです。
 お釈迦様は僕の先輩なのですよ?
 去年のクリスマスの帰り道に、偶然(多分、これは本当に偶然)二人の秘密のデートシーンを目撃してからと言う物、魅音と圭一のツーショットを監視するのは僕のライフワー……縁結びの神オヤシロ様としての勤め(*意訳 ストーキング)となっているのです。
 さあ今回も楽しい展開になってきたのです。
 前回よりも、もっとハードな展開でお願いするのですよ。あう!

 ……その前に、いい所で邪魔が入らないように梨花に連絡をしておかないといけないですね。
 1日30秒しか使えない秘密の必殺技『オヤシロテレパシー』で梨花に連絡しておくのです。
 あうあうあ~~~……はあっ! ザザッ

『梨花、梨花。聞こえますですか?』
『! 羽入あんたトイレに行くって言って、何処まで行ってるのよ? まあ良いわ。今それ所じゃないのよ。圭一達が帰ってこないんだけど、あんた何か分からない?』
『その事で連絡をしているのです。今、圭一達は奥の物置小屋に閉じ込められていますです』
『閉じ込められて……って、何でそんな事に? まあいいわ、すぐに皆を連れて行くから待ってなさいよ』
『あうあうあう! 駄目なのです、梨花はもうちょっと時間を稼ぐのです! 今いい所なのですよ』
『いい所? ……あ、密室に二人っきり……成るほどね。ふふふ、面白そうじゃない。とりあえず二人とも怪我とかは無いのね?』
『あう。その点は全然問題ないのです。だから梨花はできるだけ時間を稼いで下さいなのです』
『了解したわ。――羽入、クリスマスの時以来の重大任務よ。良い報告ができたらエンジェルモートのデザフェに連れて行ってあげるわ。しっかりね』
『あうあうさー。任せてください梨花大佐! なのですっ。それでは「6の目」を!』
『「6の目」を!』 ザザッ、プツッ……。

 あうあう♪ さあ、圭一。このオヤシロ様があなたに時間を作ってあげましたのですよ。
 あのクリスマスの夜の奇跡をもう一度起こして見せるのですっ♪ 


 ―― 後編へつづく ――
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cvwith

Author:cvwith
岡山に生息。
カレーは混ぜてから食べる派です。
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を中心に、ショートストーリー(SS)を書いています。
「うみねこ」もちらほらとやってます。
いずれオリジナルも書いてみたいと野望を持っております。

メアド : kdksf1@mail.goo.ne.jp
「@」を半角にして、ご使用ください。
感想・ご意見・イラストなど随時激烈に大歓迎中です!



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