妄想の地図帳
 「ひぐらしのなく頃に」が好きなおっさんが、二次創作やオリジナル物語を書いたりするとかしないとか。
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海砂さんSS【エイプリルフールの日SS~昼壊し編的な四月一日~】 いやっほう!! 素敵作品貰っちゃったYO!!
 みなさんいやっほう!
今日はそれぞれの絆のアップ予定でしたが、また今度にします!
何でかって? それはね……
あの『ひぐらしのなく頃に小説大賞』で、ギャグ・コメディ部門みもり賞を受賞した海砂さんからSSを頂いたからです!! ひゃっほう!

お題は【エイプリルフールの日SS~昼壊し編的な四月一日~】
四月にぴったりのSSですね。とてもリズミカルでコミカルな作品で、思わず笑っちゃいます。
それではどうぞお楽しみ下さいませ!

あ、せっかく頂いた作品ですので、コメントどしどし書いてあげて欲しいです!
僕も書きます! 自分のブログにコメント書いちゃうZO! ww



―― 海砂さん作品 ――


 放課後に行われる魅音の部活、今回の種目は推理ゲームだった。
 いつもなら早々と圭一、レナ、羽入が落ち込むか逆に大差で勝利するといった時間帯で、誰もがトップになり得、誰もがビリになり得るといった接戦が繰り広げられていた。
 接戦の焦りから皆、次第に長考することが増える。結果勝負が長引いていった。
 辺りはどんどんと暗くなっていき、部活は辺りが夕焼け色に染まるまで続いていたが、それでも決着がつかない。
 魅音がそこで打ち掛けを進言する。
 後日また仕切り直して決着をつけるということだった。
 高度な心理戦により疲弊した一同は魅音の提案に賛成すると、遊び道具を魅音のロッカーに仕舞い、机を元通りに直す。
 そして片付けが終り、さあ帰ろうというときに魅音がふと皆に訊ねた。
「明日って何の日だっけ?」
「? いきなりなんですの?」
「みぃ?」
 皆がカレンダーに目をやる。
 今日は三月の三十一日、三月最後の日だ。明日にはカレンダーが一枚破られ、四月のカレンダーが顔を出すだろう。
 急な魅音の問いに圭一は唖然としながらも、無難に答えた。
「明日? 四月一日だな。それがどうした?」
「いや、日付じゃなくってさ」
 次の日が何の日か最初に気がついたのはレナだった。
「あっ、明日はエイプリルフールなんだよ、だよ」
 それから合点がいった沙都子も口を開く。
「あー、そういえばそうでございますわね」
「ふ、そんな日もあったわね。すっかり忘れてたわ」
 時間巻き戻しのせいで四月を忘れかけていた梨花は思わず素の口調で呟く。同意を求めようと羽入を一瞥した。
 ところが羽入は梨花の視線が自分を責めているものだと勘違いして、誤魔化すようにまくし立てる。
「あぅあぅそうなのです! 明日は一年間で唯一合法的に嘘ついていい日なのです! とっても変わった日なのですよぉ!」
「うっさい」
「あぅ」
 ぺしっと梨花に頭を叩かれて羽入は黙った。
「んで、エイプリルフールがどうしたんだよ?」
 不思議そうに圭一が訊ねると、魅音はニヤリと彼に笑いかけた後、皆を見回し提案した。
「皆、今日の勝負の決着はエイプリルフールで決めるってのはどう?」
 何かよからぬことを企んでいるようだ。
「エイプリルフールで何をするんですの?」
 沙都子はまた合点がいかない様子。
 沙都子の当然の質問に魅音は頷くと説明を始めた。さっきまでの疲れきっていた表情が嘘のように生き生きとしている。
「エイプリルフールの日に部活メンバー内で化かし合いをするんだよ。勝利条件は自分以外の部活メンバーをどれだけ嘘に引っかけられるか。つまり騙した人数が多い人が勝ち。これでどう?」
「化かし合いか、なるほどな……面白そうだ。だが、嘘に引っ掛けたとかはどう判断するんだよ? 引っ掛けられたやつがわざわざ自己申請するのか?」
 圭一の疑問に沙都子が言葉を付け足す。
「それだと引っ掛けた相手にとぼけられたらおしまいですわ。まったくもって圭一さんがやりそうなことですわね」
「はぁ! それはお前のほうだろうが!」
「おーっほっほっほ、この私がそんな見苦しいことするわけありませんわ。圭一さんじゃあるまいし♪」
「何をーっ! これでも食らえ沙都子!」
 ゲイボルグの異名を持つ、お決まりのデコぴんが沙都子のおでこにクリーンヒットする。
「ふえーん! 圭一さんがデコぴんしたー!」
「ふん、これに懲りたら少しは先輩を敬うことを覚えろ」
 沙都子が泣き出すとその反応に圭一は満足する。だが、それもお決まりの彼女の嘘泣きであった。沙都子はレナの背中に隠れてあかんベーをしている。
「はぅ~! 嘘泣きでレナを焚き付けて圭一くんを殴らせようとする打算的な沙都子ちゃんかぁいいよう!」
「ちょ、ちょっと待て! そこまで分かっていながら乗るなよレナ! へぼっふ!」
 圭一はこれまたお決まりのレナパンで報復を受けたのだった。
 夕暮れの教室で圭一が宙を舞っている場面から、梨花と羽入はさも何事もなかったかのように目を離すと、圭一たちの代わりに魅音に訊ねた。
「それで、結局どう判断するのですか?」
「あぅあぅ、やっぱり自己申請なのです?」
「うんにゃ、その必要はないんだよ。雛見沢ではエイプリルフールに誰がどんな嘘に引っかかったかなんてすぐ知れ渡るんだから」 
 申請せずともそのうち勝手に耳に入ってくるよと続け、魅音は黒笑いを浮かべる。
 いつの間にか復活していた圭一が威勢良く言った。
「よっし、やってやろうじゃねえか。全員騙くらかしてやらぁ!」
「くっくっく、全員に騙されてビリにならないことを祈ってるよ」
「魅音、その言葉そっくりそのままお前に返すぜ」
「おーおー、ぴぃぴぃと鳴いちゃって。ひよっ子がぁ」
 圭一と魅音のにらみ合い。バチバチと今にも火花が飛び散りそうだ。
 それを見て沙都子が呆れて呟く。
「気が早いですわね、エイプリルフールは明日でしてよ」
「あぅあぅ。沙都子、戦いはすでに始まっているのですよ。
「そうね、今日は早く帰って作戦を練るなりしておいたほうがいいわね……」
「レナも負けないんだよ、だよ!」
「くっくっく、皆やる気満々みたいだねぇ。では解散!」
 魅音の掛け声を最後に皆、一分一秒も無駄にはできない、我先にと一斉に帰宅した。


 


 

 【エイプリルフールの日SS~昼壊し編的な四月一日~】






 圭一は家に帰宅するなり、私服に着替えるとすぐにエイプリルフールの対策を練り始めた。
 今回の戦いでは敵の嘘に引っかからないのはもちろんのこと、攻撃の手段も考えねばならない。
 最低限相手を騙す嘘が一つは必要だ。
 トップを狙うならさらに複数個考えねばならないだろう。同じ手がそう何度も通用する相手ではないことはいつもの部活で圭一は分かっていた。
「うーん、狙うならやっぱレナかな」
 レナならポーっとしているし適当な嘘でも軽く引っかかってくれそうだ。
「レナは恐れるに足らず。敵はやはり魅音か?」
 魅音はなかなか手ごわそうだ。詩音を使って双子入れ替わりなんていう、一見地味でベタだが効果的な嘘を使ってくるかもしれない。「魅音がいてもあいつの名前は呼ばないようにしよう」
 圭一は一人ごちながらノートにその点を箇条書きする。
 今回の嘘のつき合いは嘘の濃さではない、どれだけ騙すことができるかだ。そこが怖い所である。大仕掛けな嘘はダメージが大きいが多用はできず、今回の戦いには不向きだ。
 故にシンプルイズベスト。
 しかしシンプルなものほどばれやすく、攻撃力が低いのが欠点だったりする。部活メンバー相手では、やむを得ずだが大仕掛けな嘘をつくことになるだろう。
「そうなると…………」
 何が効果的だろうか。圭一は閃いたアイデアをとりあえずノートに次々と書き出していく。
 複数あるアイデアを再び頭の中に戻し、煮込む。そして、再びノートに箇条書きして形にする。
 その作業はエイプリルフール当日まで続いた…………。


「圭一、もう時間よ。起きなさい。レナちゃん来ちゃうわよ」
「う、うん……」
 母親の声で圭一はうめき声を上げながら布団から出る。
 明け方まで起きていたからまだ眠い。レナの存在がなければ、そのまま寝続けていただろう。
 起き上がるとすぐに圭一は着替え始める。
 支度を整えると朝食を取る。これからの戦いに備えてしっかりと。
 丁度圭一が朝食を食べ終わった頃に呼び鈴が鳴った。
「お、来たな」
 朝っぱらからいきなりレナが何かを仕掛けてくるかもしれないと圭一は邪推するが、思い直す。
「魅音じゃないんだからそれはないな」
 玄関を開けるとレナがいつもの様子で挨拶をしてくる。
「おはよ、圭一くん」
「おー、レナおはよう。ん、右肩に虫がついてるぜ」
「えっ、ホント?」
 レナは圭一に言われるがまま右の肩を見るが、無論虫なんて一匹もついていない。騙されたことに気づき、レナは悔しそうに圭一を見た。
「はぅ、やられた」
「くく、レナは素直だな。まずは1ポイントいただきだぜ」
「うう、いきなり酷いよぅ……せっかく迎えにきてあげてるのにぃ…」
「それとこれとは別だ。油断しているレナが悪い」
「今日の圭一くんは意地悪なんだよ」
 ぷぅっとむくれてレナが呟いた。どうやら彼女はエイプリルフールのことをすっかり忘れていたようである。
「さ、魅音が待ってる。行こうぜ」
「あ、待ってよ~」
 レナの脇を通り圭一は家を出る。レナは追いかけるように玄関の扉を閉め、圭一の隣に並ぶ。
「レナ、一つ忠告しておく。詩音には気をつけろよ」
 レナが隣に来ると圭一は突然深刻そうな顔で言った。
「詩ぃちゃん? どういうことかな?」
 本来詩音は部活メンバーではないのでこのエイプリルフールの戦いには無関係なはずである。レナが意味が分からず首をかしげると、圭一はそんな彼女の疑問にあっさりと答えた。
「双子で入れ替わっている可能性がある。間違っても、今から会う魅音の名前なんて軽々しく呼ぶんじゃないぞ」
「あ、そっかぁ。そうだよね」
「レナは人がいいからな。色々と気をつけたほうがいいと思うぜ」
「うん、分かった。ありがと圭一くん」
 圭一がレナに忠告をし終えた頃、魅音の待つ水車小屋が見えてくる。その場には人影はない。
 二人はさらに水車小屋に近づくが、魅音の姿はなかった。
「また魅音は遅刻かよ」
「まだ少しだけ余裕あるし待つ?」
「いや、行こう。魅音はほっとけ」
「って、なに冷たいこと言ってんのさ~!」
 遠くから叫び声が聞こえる。
 叫び声のする方角に顔を向けると魅音が走ってくるのが見えた。
「あ、魅ぃ……じゃなかった。おはよー!」
「おはよう、レナ! そして圭ちゃん、後で酷いよ?」
「なんだよ、遅刻してきたお前が悪いんじゃないか」
「あはは、そりゃそうだけどさ。んで、圭ちゃんたちは今日どんな嘘を考えてきたのかなぁ?」
 圭一は返事の代わりに魅音に訊ねた。
「ところでお前、実は詩音だったりしないだろうな?」
 それはエイプリルフールのために考えを練ってきたぞという明確な答えだった。
 魅音は一瞬考えると、すぐさま圭一の言おうとしていることを察し、
「あはは、ばれちゃいましたか☆ さすがです、圭ちゃん」
 と態度を一変させる。
「やっぱり詩ぃちゃんなの……?」
 レナが驚きの声を上げる。
 魅音はレナのその反応を確認すると、今度はいつもの様子でいやらしい笑みを浮かべた。
「……な~んて、どうだろうねぇ。くっくっく、さておじさんはどっちなんだろうね?」
 レナは困り顔で助けを求めるように圭一を見た。
「はぅ、ほんと今日の魅ぃちゃんはどっちなんだろ。圭一くんは分かるかな、かな?」
「ああ、俺にいい考えがある。ちょっと耳を貸せ」
 圭一はレナの耳元で魅音に聞こえないように自分の考えを伝える。
 その様子を魅音は、どんな考えであろうと自分の正体を暴くものではないと自信満々で見守っていた。 
 レナに伝え終わった後、圭一は一歩前に出ると魅音に視線を投げかける。
「な、なにさ?」
 戸惑う魅音。だが圭一は何を言うでもなく、彼女の横を通り過ぎていく。
「あ、あるぇ? 圭ちゃん?」
 レナも黙ったまま魅音の横を通り過ぎる。
「ちょ、レナもいきなしどうしたの? ねぇ?」
 聞こえていないのではない。あえて無視といった状態だった。
 魅音は急に冷たくなった二人の態度に不安を覚える。
 二人の後ろを追いかけると、興味を引くためにさも独り言を言うように圭一たちに聞かせた。
「あー、もう正体ばらしちゃおうかなあ。私が詩音か魅音か、誰かさんたちはとっても興味あるんじゃないかなあ。もちろん今ならエイプリルフールだからって嘘なんてつかないんだけどなあ。どうしようかなあ?」
 魅音は前を歩く二人をチラッと盗み見る。しかし、二人が興味を持って振り向いた様子はまったくなかった。
 もしかしたら聞こえてなかったのかもしれないと、魅音は健気に独り言を続ける。
「な、なんだか私ってば、かなり魅音っぽい気がしてきたなあ。なんというか雰囲気? 匂いっていうの? 詩音には出せない爽やかなフローラルの香りがさぁ。というか思いっきり魅音だよね私って。むしろ完全に魅音じゃね(?)みたいな――――……」
 チラリと再び盗み見る魅音。
 だが当の圭一たちは梨花と沙都子の嘘対策を話し合っており、やはり魅音の話など聞いてはいない。
 いわゆる完全無視だった。
「圭ちゃんとレナのバーカ! もういいもん、もう絶対教えてやんないもん! 後で教えてって言っても知らないもん! バーカバーカ!」
 涙目でがなる魅音はさながら小学生であった。
 圭一とレナはそんな魅音を背に、笑いをこらえながらなお魅音を無視して学校に向かった。

 昇降口に着いた頃にはさすがに魅音への無視は終わっていたが、圭一たちはすでに彼女が本物の魅音だと見極めており、一方魅音は無視されたことで一人拗ねていた。
「そんな怒るなよー。ほんの冗談だろ?」
「ふん、圭ちゃんなんか知らないもん」
「悪かったって。そろそろ機嫌直してくれよ魅音」
 圭一は下駄箱から上履きを取り出しながら魅音に謝っているが、悪びれた様子がないので効果は薄い。
 レナのほうは悪ふざけが過ぎたとだいぶ反省している様子なので、魅音は許しかけていたが、圭一のほうは後で痛い目に合わせようという腹積もりだった。
 痛い目に合わせる、エイプリルフールの嘘で。
 魅音は教室と昇降口を繋ぐ――職員室付近の――廊下で『知恵先生が下着姿で歩いている』という嘘をつくことにした。圭一なら嘘だと分かっていても指差した方角を見る。まず間違いはないだろう。『レナの前で恥を晒しな圭ちゃん』と魅音は復讐に燃えていた。
 チャンスを覗う。そして絶好のタイミングで圭一の背後を指差し魅音は叫んだ。
「ああっ、知恵先生が下着姿で歩いてるー!」
「な、なんだってー?!」
 案の定圭一は魅音の思惑通りスケベ心最大で後ろを振り返ってしまう。
「しまっ!」
 思わず魅音の嘘に乗ってしまった圭一。途中で動きを止めようとするがもう遅い。彼の首はとうに慣性の法則には逆らえない。
 その様子を見て取った魅音は勝ち誇った笑みを浮かべ、圭一が顔を真っ赤にして自分のほうを向くのをただ待った。『嘘だよーん。馬鹿だなあ圭ちゃんはー』『くっくっく、圭ちゃんてば朝からやらしいねぇ』などどういう言葉をかけて彼を弄ろうか考えていた。
 だが……圭一は魅音の方を一向に向こうとしない。魅音が指差したほうをただ凝視している。
 気づけば、圭一の隣にいるレナも唖然としているのが分かる。
 二人の視線の先は魅音からは圭一の身体が邪魔をして見えない。魅音は少し体の位置をずらして二人の視線の先を見ることにする。
 すると……果たしてそこには、

 本当に『知恵先生が下着姿で歩いている』ではないか!

「えええええええええ?!」
 魅音はわけが分からず悲鳴を上げた。
 自分の言ったことは嘘だったのに、本当に知恵先生が下着姿で学校を歩き回っているという事実に魅音は頭がどうにかなりそうだった。
 どうにかなりそうなのは魅音だけではない。圭一とレナもだった。
 特に圭一は鼻から赤い水をたれ流しながら、『大人ってすげえ……』とかよく分からないことを口走っている。
 脳の処理が追いついていない状態の魅音たちに知恵が近づいてくる。無論、下着姿のままで。
「あら皆さん、おはようございます」
 知恵に声をかけられて、はっと我に返ると魅音は訊ねた。
「せ、先生……」
「はい?」
「服……どうされたんですか……?」
「邪魔なので脱ぎました。それが何か?」
 とても教育者の口から出たとは思えない言葉に一同は衝撃を覚える。
 再び魅音たちは放心状態になるが、そんな彼らに知恵は取ってつけたように言った。
「あ、そうそう。私はこのままウォーキングに出かけますので、皆さん自習でお願いしますね」
 そのまま返事も待たず、魅音たちの脇を通り抜け、知恵は学校を出て行ってしまった……。無論、下着姿のままでである。

エイプリル知恵


 魅音たちは放心状態で知恵を見送っていたが、教室からの悲鳴によって再び我に返った。
「?! こ、今度は何なのさ?!」
「今のは……岡村君の悲鳴か?!」
「圭一くん! 魅ぃちゃん! 教室に急ごう!」
 三人はドアを勢いよく開け、教室に駆け込む。
 事情が飲み込めない圭一は床に膝を突いて打ちひしがれている岡村に話を聞くことにする。
「岡村君、何があったんだ!」
「あれ……あれ……」
 岡村の指差す先を見て圭一たちは目を疑った。
 教室の奥のほうでは、なんと富田と沙都子がとても仲良さそうに、否、バカップルのようにくっつき合っているではないか。
「今日はエイプリルフールだから、『北条と付き合うことになった』っていうのは富田君の嘘だと思っていたのに…………。ち、畜生、お互い片思いでいようぜって男の約束はどうなる…………くそぅ……」
 明らかに男らしくない男の約束を踏みにじられて心底悔しがっている岡村君は放置し、圭一たちは沙都子と富田の会話に耳を傾ける。
「おや、皆が僕たちを見ているよ。ちょっとくっつきすぎじゃないかいハニー?」
「いいじゃありませんの。皆さんに私達の愛を見せつけてさし上げる良い機会じゃございませんこと」
「そうだねハニー。愛しているよ」
「ええ、私もですわ。ダーリン(はぁと)」
 誰だこいつら。
 教室中の皆が思っていることだった。
 見れば見るほど富田と沙都子はまさしくバカップルそのものだ。だが、フラグをどう間違えれば彼らがラブラブになるのか理解できない。
 教室の皆は沙都子と富田のことが気になって仕方がないが、それでもあえて訊ねる勇者はいなかった。
「沙都子と富田君がなぜ…………そうだっ! 梨花ちゃんは?!」
 圭一は教室を見回し、梨花を探す。
「そうか、沙都子といつも一緒にいる梨花ちゃんなら何か知っているはずだね!」
「でもその梨花ちゃんはどこよ?」
 レナと魅音も一緒になって探すが教室には見当たらない。いつもならすぐに自分達の元に挨拶しに来るのだが……
 梨花の代わりに見知らぬお姉さんが圭一に近づいてくる。
「あら、誰をお探しなのかしら?」
「ど、どちら様ですか?」
 いきなり見ず知らずの人に話しかけられて慌てる圭一を見て、その人物はくすくすと小馬鹿にするように笑った。 
「分からないかしら。私よ、古手梨花」
「なんだってー?!」
 梨花と名乗るその女性は言われて見ればどことなく彼女に似ていた。
 しかし古手梨花は小学生、皆の記憶に写る彼女はこんなグラマーなお姉さんでは決してなかった。
「ど、どうなってるんだよ?」
 圭一は魅音・レナと顔を見合わせるが、二人は分からないと首を振る。その輪の中に羽入がハイテンションで割って入ってきた。
「どうですか圭一たちー! 嘘を満喫してますですかー!」
「「またお前か」」
 羽入の様子に、この奇妙な状況が彼女のせいであることを理解した圭一たちは、以前起こった相思相愛を叶える古手家の宝『フワラズの勾玉』を巡る騒動を思い出していた。
 一方羽入は、過去その古手家の宝で圭一たちに色々と迷惑をかけたにも関わらず、さもそのようなことはなかったかのようにあっさりと頷く。
「はいですー! この古手の秘宝”ウ・ソエイトオーオー”の力はすごいと思いませんですか!」
 圭一たちは羽入に突きつけられて、彼女の手にある奇妙な像を凝視する。像はオヤシロ様が棒高飛びをしている様子をかたどった――バーだけでもかなりの高さがある――激しく意味不明なものだった。
 梨花が羽入の言葉に同意する。
「そうね、嘘が本当になるなんてすごいわ羽入! 私、アンタのことを少しだけ見直したわ!」
「あぅあぅ、やったのです! 梨花に褒められたのです!」
「それ、褒められてるっていうのかなあ」
 喜ぶ羽入を見てレナが苦笑している。
 梨花は圭一の方に向きなおすと、今度は彼に言葉を投げかける。
「見なさい圭一。圧倒的ではないか、我がバストは! あーっはっはっは、まるで沙都子の胸がぺちゃぱいのようよ!」
 梨花は豪快に笑いながら、自らの胸を両手でわし掴んで感動していた。
 圭一はその梨花の様子に戸惑い、羽入に小声で問いかける。
「……羽入、アレは本当に梨花ちゃんなのか?」
「そうなのです」
「キャラが著しくお変わりになられている気がするのですが?」
「あぅあぅ、梨花は最初からこんなもんですよ」
「まじかよ。黒いなとは思ってたけど、よもやここまでとは」
 続いて魅音が羽入に訊いた。
「ところで、ウ・ソエイトオーオーだかなんだか知らないけどさあ。なんでそんなものの封印を解いたわけ?」
「あぅあぅ、僕は嘘つくのとかあまり得意ではないのです」
「うん、知ってる。おじさん、実は羽入狙いでたくさん嘘を考えてきたし」
「あぅあぅあぅ! そ、そうなのですよ……絶対僕が一番狙われるに決まっているのです。だから、今回エイプリルフールで部活の勝負をすることになって、ほとほと困ってたのですよ。だけど会則で『勝つために最大限の努力しろ』っていうのがあるから、僕なりに一生懸命考えたのです。そして結局、自分以外の嘘が全部本当になったら負けないかなあって考えに至ったわけなのですよ、あぅあぅ」
 羽入の説明を聞き終わると、圭一が口を開く。
「なるほど、大体事情は分かった。それはいいとして羽入、この今の状況って元に戻せるんだよな?」
 富田とラブラブ状態の沙都子を一瞥する。現在、富田の耳を膝枕で掃除中だった。
「正直、あんな腑抜けた沙都子はもう見たくないんだが」
「はいです、もちろん戻せますですよ。像の裏についているスイッチをポチッと押せば、すべて元通りなのです。ちょうど、僕もそろそろ元に戻そうかなって思ってたところなのですよ。……ってあぅ? 像は何処に?」
「「はいぃ?!」」
 羽入がスイッチを押そうと自分の手を見ると、持っていたはずの像が消えている。
 まさか像に足が生えて逃げ出していったなんてことはないはず……周りを見渡す圭一たち。
 その中でやはりレナが最初に像のありかに気づく。レナの視線は梨花の手中にある像に集中していた。
 羽入の手から梨花が素早くかすめ盗ったのである。皆も遅れてそのことに気づく。
 レナは優しく微笑み、梨花に返すよう促した。
「梨花ちゃん、像を羽入ちゃんに返そうね、ね?」
 だが梨花は首を横に振ってレナを嘲笑った。
「くすくす、いやよ。だってまだ私はこのままでいたいんだから」
 梨花の返答を聞いた瞬間、笑顔は凍りつき、レナは梨花をまっすぐ睨む。
「だったら力づくだね? 返さないんだからしょうがないよね、よね」
「やってみなさい? 遊んであげるわ鉈女」
 梨花は像を片手で杖のように持ち、軽く振り回してみせるとレナを挑発する。
 そこに挑発上等とレナは先制のレナパンを放った。1、2、3……何発出たのか周囲の人間には数えることすらできない。
 しかし梨花は余裕の様子でレナの高速拳をいなして防ぐ。レナパンをすべて防いだ後、彼女はレナの足を払い転ばせた。
 足を払われたレナはバランスを崩し受身を取れない。攻撃の勢いのままロッカーに突っ込んで頭をぶつけた。
「はぅっ! い、痛い……」
「ふ、体格があればざっとこんなものよ。……悪いわねレナ。だけど今これを返すわけにはいかないの」
 梨花は捨て台詞を残し、教室から出て行ってしまう。
 圭一・魅音・羽入はレナと梨花の攻防についていけず、梨花が逃げるのをただ見ているしかできなかった。
「す、すげえ……あのレナパンをすべて見切っただと? あの、スピードだけなら徹甲弾の赤坂に勝るとも言われているレナパンを、梨花ちゃんが?!」
 よろよろと立ち上がるとレナが弱々しく言った。
「うう、圭一くん……負けちゃったよぅ」
 圭一はレナに駆け寄ると肩を貸す。
「いいんだ、それより大丈夫かレナ! 今保健室に連れてくからな」
「ううん、そこまでしなくても平気だよ。でも、絆創膏くらいは欲しいかな」
 レナを椅子に座らせると圭一は魅音に目をやる。魅音は頷いて教室を飛び出ると、すぐに絆創膏を持ってきた。
「はい、レナ」
「ありがと魅ぃちゃん。……どうしたの羽入ちゃん?」
 レナがふと魅音の後ろに立っている羽入を見ると、彼女の顔がやけに青ざめていることに気づく。羽入の青ざめはレナが負傷したからといった心配からの変化では決してない。
「あぅあぅあぅ……大変なのですよ」
 圭一も不思議に思い、羽入を促す。
「何が大変なんだ?」
「……さっき説明したとおり、像のスイッチはオフにするとすべてが元通りになります。でも、スイッチを押さなければずっとオンのままなのです」
「? だからなんなんだ? ……もっと分かりやすく完結に言ってくれ」
 要領を得ない圭一だったが、またいつぞやの珍騒動が起きるのではないのかと不安を抱いていた。
「あぅあぅ、つまりは像が僕の元に戻らない間、雛見沢中の嘘がすべて本当になるわけなのですが……。もし誰かが取り返しのつかない嘘をついたら大変なことになるのです」
「元に戻せなくなるかもしれないってことか!」
 レナも事の重大さに遅れて気がつく。
「た、大変なんだよ! 早く梨花ちゃんに事情を説明してスイッチをオフにしなきゃ!」
「もちろんです! 大丈夫、まだそんなに時間は経ってません! 今すぐ追いかけましょう!」
 一刻も早く梨花から像を奪い返さねばと圭一・レナ・羽入の心は一つになる。
 だがその場で、一人事情が飲み込めてない魅音がつい口を滑らしてしまうのであった。
「つまり? 例えば『後1時間で雛見沢に巨大隕石が落ちて雛見沢が滅亡、誰も生き残れはしない』なんてことを誰かが言ったら大変ってことー?」
「わ、魅音ばかっ! そんなこと言ったら……あー……」
 慌てて圭一が魅音の口を押さえようとするが、既に手遅れなことに気づき途中でやめる。
「え、えーと? ……も、もしかしておじさんやっちゃったってやつ? だ、大丈夫だよね、セーフだよね?」
 魅音が自分の過ちに気づいた丁度その時、教室に未だ下着姿のままの知恵先生が飛び込んでくる。
「皆さん聞いてください。雛見沢に1時間後、巨大隕石が落ちてくるそうです。直ちに避難を始めます。慌てず先生の指示に従ってください!」
「アウトだったな、魅音」
「いやー参ったねえ、あっはっはー…………本気でごめんなさい」
 クラスに動揺が走る。教室はガヤガヤとうるさくなり、あまりに色々なことが起こりすぎて泣きじゃくる子も出ていた。
 そんな中、冷静に動ける人間は圭一たちだけだった。
「畜生! なんてこった、本格的にまずいぞ!」
「って圭一くん鼻血、鼻血出てるから」
 がその中で一人、圭一だけはこの本格的にまずい状況で、再び知恵先生の下着姿に興奮していたのだった……。
 圭一の鼻血をハンカチで拭ってやりながら、レナは羽入に訊ねる。
「羽入ちゃん、像のスイッチを押す以外には止める方法はないの? 例えば『雛見沢に隕石は落ちてこない』とか嘘ついたり」
「無理です、一度本当になった嘘は像を止めるまでどうにもならないのですよ!」
「なら早く梨花ちゃんを探し出さないと。もうタイムリミットは1時間をきってるよ」
 レナが椅子から立ち上がる。おでこには絆創膏が貼られているが、もう身体は平気なようだ。
「でも梨花ちゃんがどこにいるかなんて……雛見沢だけでもかなり広いんだよ?」
 魅音は責任を感じて若干凹んでいるようだ。声が弱々しい。
 そんな魅音を励ますように圭一が威勢良く声を荒らげた。
「考えている時間はねえ、やるしかないんだ。手当たり次第行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいなのです!」
「なんだ羽入?」
「これを一個ずつ持っていてください」
 羽入は鞄から小さな水晶球を数個取り出し、圭一・レナ・魅音それぞれに一つずつ手渡す。
「時間がないので説明は省きますが、これはカムノミコトノリと言って、耳につけると僕と会話ができる通信機みたいなものです。捜索中はこれを耳に入れて連絡を取り合ってくださいなのです」
 圭一たちはカムノミコトノリを装備した後、強く頷き合うと、教室から出ようとする。
 そこに知恵の制止が入った。
「ちょっと待ちなさい。勝手な行動はやめて先生に従いなさい!」
 しかし総スルー。下着姿のまま言われても教師の威厳は皆無だった。
 圭一たちは知恵の言葉にまったく耳を貸さず、勢いよく教室を飛び出ると、昇降口で靴を履き替え校門を出た。
「ここからは分かれて探そう! 一時間で梨花ちゃんを探し出すぞー!」
「「オー!」」
 第二次雛見沢惨劇回避戦の火蓋が切って落とされた瞬間であった。
 
 圭一たちはバラバラに散って雛見沢中を探し回る。梨花の思考パターンをトレースし、どこに隠れるかを考える。
 梨花が見つかるのは時間の問題だった。だが、今回彼らにはその時間すらない。焦りだけがつのる。
 タイムリミットも刻一刻と迫っている。残り時間三十分を切っていた……。
 そんな後半戦突入の頃――魅音がついに梨花を発見する。園崎組の情報網を利用しての梨花の捜索が功を奏したようだ。
 現在、魅音は全力を投じて、梨花を追いかけていた。
 壮絶な追いかけっこ。雛見沢の滅亡が掛かっているのだ、捜索の疲労感も吹き飛んだ。家に帰って疲れを取りたいという気持ちも少しあったが、今はただ目標の確保が先だった。
 それにこれは自分が蒔いた種でもある、自分が落し前をつけなければいけない問題だ。そう考えると魅音は死んでも負けられない。
「梨花ちゃん! お願いだから止まって話を聞いて! 早くその像を止めないと雛見沢に隕石は落ちてきて大変なことになるんだよ!」
「くすくす、またその嘘? いい加減聞き飽きたわよそれ。私を騙すならもっとうまい嘘を考えなさい?」
「だーかーらー! それはたしかに嘘だったけどそうでなくって! あーもうどう言えばいいのー?! とにかく嘘が本当になったんだってばー!」
「何を意味不明なこと言ってるのよ。煙にまいて騙そうったってそうはいかないわ! これでもくらいなさい魅音! 『魅音は何もないところで転ぶドジッ娘』!」
 梨花の言葉に呼応してオヤシロ様の像が怪しく光る。と同時に像内部から奇妙な鈴の音が発生し辺りに響き渡った。
「梨花ちゃん何を?! へぶっ!」
 鈴の音が鳴り終わると、突然魅音は何もないところで転び、顔から地面に激突した。
 それを確認すると梨花は走るのをやめた。
「じゃあね、魅音」
 と倒れこんだ魅音に言葉を投げかけると、ゆっくり歩いて立ち去っていく。
「ちょ、へぶっ、待っ、ぎゃー!」
 立ち上がっても少し歩き出しただけで、すぐに転んでしまう。今の魅音はまさに『何もないところで転ぶドジッ娘』そのものであった。


「何ぃっ、魅音のやつがやられた?!」
『あぅあぅ、そうなのです』
 魅音の戦線離脱の知らせは水晶球を介して羽入から圭一に伝えられていた。
 二人は魅音のやられた地点に移動しながら通信を行っている。
 事情が飲み込めない圭一は羽入に訊ねた。
「ど、どうして魅音が?!」
 沙都子が力にならない今、一番頼りになるはずの魅音の戦線離脱に圭一は動揺を隠せずにいた。
『レナにも言いましたが、梨花は像を使って嘘を本当に変えながら逃亡をしているようなのです』
 魅音は梨花の嘘によりドジッ娘に変えられて身動きが取れないと羽入は続けた。
「そんな使い道があるのか、恐ろしいぜ……。尚のこと早く奪還しねえと。たしか魅音のやられた場所は入江診療所付近の森だったな」
『はいです。今僕とレナもそちらに向かっているところなので……ああっ!』
 突然水晶球から聞こえる羽入の声が叫び声に変わる。
「どうした羽入?!」
『たった今、レナが梨花にやられましたのです!』
「なんだってー!!」
『あぅあぅあぅ! レナは梨花の嘘によって『びーえるが大好きな腐女子☆』にされてしまったのです!』
「うわ、そいつは酷い……。レナのことだから世界中の男という男を『お持ち帰りぃ!』とかするぞきっと! 新たな問題発生か?!」
『いえ、それは大丈夫みたいです。どうやらレナは二次元専門の腐女子☆のようです。今は梨花の捜索そっちのけで、漫画やアニメのカップリングの妄想にふけっています」
「それはそれでコミケとか襲撃されそうで怖いな」
『というわけなので、圭一も梨花との接触の際十分気をつけてください』
「分かった、気をつける」
 それを最後に通信が切れた。
 魅音がやられた場所に到達する。
 圭一は倒れている魅音を発見した。
「魅音、大丈夫か?」
「け、けいち゛ゃん……もう、おじさんダメ……」
 何度も転んだのか、魅音の髪や服は土でかなり汚れている。
 圭一はそれを見て、魅音がどれだけ頑張ったのか理解する。
「ああ、もういい。魅音はよくやった。梨花ちゃんはどっちに行ったんだ?」
「……ここをまっすぐだと思う」
「わかった。お前は休んでろ、後は俺たちに任せろ」
 圭一は魅音が指差す方向に走り出す。
 もう時間はほとんどない。疲れを感じている暇などない。圭一は休むまもなく走り続けた。
 目指すは入江診療所。圭一は直感的にそこに梨花がいるような気がしたのである。
 診療所に到着すると圭一は入江を訪ねた。
「監督、今日梨花ちゃんを見かけませんでした?!」 
「梨花ちゃん? いえ見てません」
「そうですか……」
 圭一は自分の直感が外れたことに落胆する。
「でも妙な像を持ってこそこそと立ち去ろうとしている梨花ちゃんらしき人物なら、前原さんのすぐ後ろにいますよ?」
「そうですか……エエー!」
 慌てて圭一が振り返ると、今にも梨花が窓から逃げ出そうとしているではないか。
「「あ」」
 後ろを振り向いた圭一と窓に足をかけた状態の梨花の目が合う。その状態でしばらくお互い硬直した。
 そして、思い出したかのように二人はそれぞれの行動を取る。梨花は窓から外に出ると脱兎の如く逃げ去り、少し遅れて圭一がその後を追う。
 追いかけっこの果てに、ついに圭一は診療所の袋小路に梨花を追い詰めた。
「くっ、行き止まり?!」
 圭一は梨花を逃がさないよう気をつけつつ、呼吸を整えながら言った。
「ゼイ……ゼィ……っ……梨花ちゃん、もう逃がさないぜ!」
「……こうなったら……圭一は、」
 再び像を使おうとしている梨花を圭一は止める。
「おっと、残念だがもうその手はくわない」
「なんですって?」
 圭一はその理由を梨花に説明する。
「さっき君を追いかけてる時『俺に対して”ウソエイトオーオー”の効果はない』って嘘をつかせてもらった。知恵先生の件で像を持ってなくてもその恩恵は受けられるって分かってたからな。さあ、分かったら観念してその像を返すんだ」
「さすが圭一。……どうやら私の完敗のようね」
 梨花はそう呟くように言うと、あっけなく像を手前に差し出し圭一に近づいてくる。
 圭一も像を受け取ろうと近寄るが、像が梨花の手から圭一へ渡る直前、梨花は態度を一変させた。
「…………と見せかけて、あっ! 『鷹野が下着姿で歩いてる』!」
「なんだってー?! ってああっ!」
 梨花が圭一の後ろを指差すと反射的に彼は後ろを振り返ってしまう。
「あっはっは! 甘いわね圭一!」
 鷹野に気をとられて圭一が隙を見せたその刹那、梨花はダッシュで彼の脇を通り抜けて逃走を再開した。 
「く、畜生! 今のは仕方なかった! 今のは男の心理をうまく突いた完璧な罠だった!」
 圭一が自分に言い訳をしながら再び梨花を追いかけていると、呆れた様子で羽入が合流する。
「あぅあぅ、ただ圭一が学習しないだけなのですよ」
「羽入! すまねぇ、すんでのところで取り逃がしちまった」
「謝罪は後なのです。今は梨花を全力で追いましょう!」
 圭一は頷き、羽入と梨花の後姿を追う。梨花は自宅のほうに向かっているようだ。
 古手神社の石段を登る。
「梨花は自宅の防災倉庫に篭城する気なのですよ! その前に取り押さえないと!」
 圭一は二段飛ばしで階段を駆け上りながら時計を確認する。
「隕石落下まで後3分! くそっ、間に合え! 間に合ってくれ! 間に合わせろぉ!!」
「あぅあぅあぅ!」
 梨花は石段を登りつつ追っ手に向かって叫ぶ。
「しつこいわね! 何がアナタたちをそこまで駆り立ててんのよ!」
「それはこっちの台詞だー!」
 すぐさま後ろから圭一のつっこみが入り、それに反論しようと梨花は後ろを振り向く。
「だから私は……きゃっ!」
 圭一に気を取られ、運悪く梨花は石段から足を滑らせる。転んだ拍子に像を落としてしまった。
「「あっ!」」
 梨花の手から零れ落ちた像は階段を転げ落ち、一気に階段下に。
 急いで像の元に向かう三人だったが、像は既に粉々に壊れてしまっていた。
 三人は像の残骸を見て呆然と立ち尽くす。
「こういう場合ってどうなるんだ……?」
「あぅあぅ……古手の秘宝が見事に粉々なのです……」
「夢のアイテムが……」
 よく見ると、壊れた像から煙のようなものが出ている。それが抜け切ると梨花の姿が元に戻った。
 像の効果が消えたことを確認すると、圭一はほっと安堵のため息をついたのだった。
「これで一件落着だな」
「一件落着なもんですかー! あぅあぅ、あれは鬼ヶ淵一千年の歴史を持つ由緒ある像なのですよー!」
「さすがにオヤシロ様が棒高跳びしている像に一千年の歴史はないだろ」
「あぅ? それもそうですね」
「だろ。もう像のことは忘れようぜ。戻って魅音とレナに報告だ。梨花ちゃんも諦めろ。帰るぞ」
「私の赤坂巨乳篭絡作戦が……」 
「僕も諦めたんですから、梨花も早く忘れるのです。あぅあぅ」
 像の効果が切れてショックを受けている梨花を強引に引っ張って、圭一と羽入はその場を後にした。

 圭一達が去った後、しばらくして富竹が古手神社の石段下を通りがかる。
「ふんふんふふーん♪ 僕は富竹! フリーのカメラマンさ! 趣味は野鳥の撮影。雛見沢にはよく来る……って、これは……?」
 富竹は壊れた像を発見する。
「これは…………結構派手に壊れているみたいだけど……見る限りじゃ、オヤシロ様の像みたいだね。そうだっ、これを修理して鷹野さんにプレゼントなんてどうだろう? うん、そうしよう。鷹野さん喜ぶぞぅ!」
 一人ごちると、富竹は地面に跪き、ごそごそとカケラを拾い集め始めた。


 後日、富竹が直した像によりまた珍騒動が起こるが、それはまた別の話である。



 END
 
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この記事に対するコメント

面白かったっすwwww
やっぱ魅音びいきなんで、独り言で気を引こうとする魅音とかナイス大トラブルを引き起こす魅音とか転びまくって半べその魅音とかあぁ可愛いよ魅音w
え? 本編の感想になって無いですか? すみませんww
真面目に言うと、テンポが凄く良いですよね。やっぱりコメディはテンポが命ですね。
素晴らしい作品ありがとうです!
これからも、気軽に、自分のブログだと思って使ってくださいね!!
【2008/04/09 01:35】 URL | cvwith #- [ 編集]


こいつぁおもすれーw さすが海砂さんだw
無視されてすねてる魅音可愛いよ魅音w
富田はとりあえず*んどけw

コンボイさんの挿絵もいいねこれw
知恵先生控えめだけどセクシーだ。大人の魅力ってやつだねw
あと、鼻血かかってる鼻血w
【2008/04/09 21:52】 URL | だいぶつ #gIYQI5Sw [ 編集]


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岡山に生息。
カレーは混ぜてから食べる派です。
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を中心に、ショートストーリー(SS)を書いています。
「うみねこ」もちらほらとやってます。
いずれオリジナルも書いてみたいと野望を持っております。

メアド : kdksf1@mail.goo.ne.jp
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感想・ご意見・イラストなど随時激烈に大歓迎中です!



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