妄想の地図帳
 「ひぐらしのなく頃に」が好きなおっさんが、二次創作やオリジナル物語を書いたりするとかしないとか。
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『約束 ― 選択肢のB ― ② 』
 はい、それではここから変態パートですww
覚悟有る方のみお読み下さい。
では早速どうぞ!

 俺の腰の上に乗っかっているデカイ尻は、アジアンテイストな柄の入った薄茶色のゴアパンツに包まれている。なかなか肌触りが良さそうだ。
 上には、鳩尾の下辺りまでしか丈の無いフード付きの黒いショートパーカー。それをチャックの一番下だけを留めて羽織っている。
 その下に着た襟の大きな緑のニットシャツの胸元は大きく肌蹴られていて、その下から黒のTシャツと、ほんのりと赤く染まった肌と、鎖骨が覗いている。
 おお……なんだ…・・・その、鎖骨から首筋に掛けての、桜色に染まったラインが……こう……何ていうか…………そそる。
 俺の腰にスーパーコンボゲージが溜まって行く。
 ――バカか俺は。頭を振って邪な想像を振り払い、もう一度魅音の名前を呼ぶ。
「…………」
「どうしたんだよ……さっきから、ずっと黙って」
「圭ちゃん」やっと口を聞いてくれた。
「何だよ――ぅえ?」
 口を開くと同時に、突然俺は両腕を捻り揚げられた。
 肘を着いて起こしていた上半身は支えを失い、布団の上に仰向けに倒され、バンザイの格好で抑え付けられる。
 予期せぬ行動の連発だ。俺は一体どうすりゃいいってんだ?
 戸惑う俺の、僅か六十センチ上で見下ろす魅音の瞳に、じわりと色が浮かんだ。
 薄く光る深緑石の瞳が見る見る内にしっとりとした潤みを帯びてきて、ぽうっと火照った頬は甘いくだものみたいだ。
 朱を食む唇が笑いの形に歪んで、うっすらと開いたその隙間から、挑発的な赤い舌がペロリと突き出される。
「……押し倒ひちゃった。うふふ」
 そう言って魅音は笑った。
 活発で溌剌としたいつもの笑顔じゃない。一瞬、魅音が大人の女に見えた。――茜さんが妖しく微笑んだなら、きっとこんな顔をするんじゃないだろうか。
 正直に言おう。スーパーコンボゲージレベルが弐に上昇した。
 ちょっと魅音、俺の腰から避けてくれないか? このままだと、両手を使わずにお前の体をほんのちょっぴり持ち上げるマジックを披露しちまう事になりかねない。
「おぉお押し倒しちゃったじゃねえだろ。何やってんだよ離せよっ」
「やら」
「やだ……って。良いよ好きにしてろよ。力で男に」
 両腕に力を込めて、強引に振りほど……けない。
「力であたひに勝れると思っれる?」
 情けないが、マジで振り解けなかった。力だけじゃなくて、多分合気道かなんかの技も使われてるくさい。肘の辺りで力が抜けちまって、抑えられている手首まで力が伝わらない。
「このやろ、どけっつうの!」
 それならばと、スーパーコンボゲージの溜まった腰を跳ね上げて振り落としにかかる。
 だが魅音の体はピョコンと跳ね上がっただけで、また腰の上にドスンと落ちてきた。
 ――ちょっと元気になってたから、痛かった。
「わは? わぁいおもしおーい! けーちゃんもっとぉ。ねーけーちゃんってばっ。もっとっ。ねー、もーっとーっ」
 魅音は俺に跨りピョンピョンと跳ねながら、今度は無邪気にキラキラと笑う。
 くそ、こいつ。どんだけフリーダムなんだよ!
 唇の端がむずむずと笑いの形に変ろうとするのを、何とか抑えた。あーもうちくしょう。本当にコイツの笑った顔、好きなんだな俺。
 遊びでやってんじゃないんだ降りろよ、と言う言葉は喉の奥で飲み込まれ、結局魅音の要望通り俺はロデオマシーンと化した。
 ポニーテールを左右に振り振り、天真爛漫に黄色い声を上げて喜ぶ魅音を見ていると、言いなりになっている情け無さが和らいでしまうから始末に終えない。
 あぁ……惚れてんなぁ。しみじみ、思った。
「くぉら圭一ぃっ」
「け、圭一?」
 飛び跳ねていた魅音が、突然鼻先三寸の位置に顔を寄せてきた。
 また目が坐ってるじゃないか。コロコロと喜怒哀楽が入れ替わって、まるで万華鏡だな。……酒癖、悪すぎるぞお前。
「今度は何だ」
「今日、何しれら」
「は?」
「は、や無いれしょ。今日、あらひがお仕事してるあいら、何してたのかーって聞いてるろ」
「そ、そりゃ……えと、仕方ないから家に居たよ」
 嘘は吐いてない。
「皆と楽しく遊んでたんでしょ」ドスの利いた声が鼻先で響く。眠たそうな目が俺を睨んでいる。
「なっ……何で……知ってんだよ」
「ああああぁーーっ。本当にそうなんらーーっ! ずっるううぅぅいっ」
「引っ掛けかよっ」
「自分れ電話れ言ってらんじゃん! 馬鹿ーっ」
 そうだった。墓穴を掘った事に今更気付く。
「うーっ、ずるいずるい。あらしらって一緒に遊びたかったのに、ずるいーっ」
「そんな事言ったって仕方ないだろ。俺だって」
「ずるいずるいずるいーッ」
 酒臭い唾を飛ばされ、鼻をかじられながら、涙まで零されたら、俺ぁ一体どんな態度をとれば良いんだ?
「何だよ、泣く事ないだろ?!」
「泣いてなんかないろっ。けーひゃんの馬鹿っ!」
「ったく……どーすりゃいんだよ、俺ぁ……」
「あついっ」
「んあ? ――はあぁ~……。もー、何だよ今度は」
 パッと、魅音が俺の両腕から両手を離し、ショートパーカーを大袈裟なアクションで脱ぎ捨てた。
 俺は開放されたチャンスを逃さずくるりとうつ伏せに回転し、匍匐前進でマウントポジションから脱出。そのまま部屋の隅まで一気に撤退した。
 暫く壁に向かい荒い息を整える。いや、実は結構危なかったんだ。
 何がって、スーパーコンボゲージの溜まり具合が、だ。
 何だかんだ言っても、夜中に二人っきりで、布団の上で女の子が馬乗りなんだぜ? 理性を保つのだって必死だ。
 一つ大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせて振り向いた。そして俺は……目を疑った。
 魅音は床に女の子座りをして、バンザイをしていたんだ。それは別に構わない。
 その両腕を拘束する様に、黒のTシャツが握られている。つまり……脱いでるんだ。
 脱ぎ捨てられて畳に転がっている、緑のニットシャツが目の端に映ったが、それは既にどうでも良い些事だった。
 ふるふると魅音が首を振ると、ポニーテールと一緒に、若草色のブラに包まれた大きな胸が左右に揺れた。
「? …………――――っ! ばっ馬鹿野郎おおおぉ。お前何やってんだあああぁっ」
 そう言いつつも俺は吸いつけられた様に、目を離す事ができなかった。
 首筋から肩に掛けての丸いライン。そこから流れるように続く桜色の稜線を、窮屈そうに若草色の布が包んでいる。
 絡んだTシャツから魅音が腕を引き抜くたびに、そのたわわな質量が大きく揺れて零れそうになる。
 今や間違いなく、俺の方が魅音よりも赤い顔をしている。絶対だ。鼓動の早さがそれを物語ってる。
「どっ、どど、どうしてッ、お、お前」
「熱いもん」
「熱くねえよっ。まだ冬だっ。真夜中だっ」
「熱いもん、けーちんの馬鹿っ」
 投げ付けられたTシャツが俺の視界を遮る。自分の意志では瞬きすら出来ない状態だったから、良かったかもしれないな。……ちょっと残念だけど。
 だけどそう思えたのも、ほんの束の間の事だった。
 そのTシャツはほんのりと暖かくて、魅音の香りがしたんだ。
 ……だめだこりゃ。こんなもんで目隠ししてたら、余計どうにかなっちまう。
 頭からTシャツを取り去ると、事態は更に悪化していた。
「あーつーいー!」を連呼しながら魅音は布団に仰向けに寝転がり、両足を持ち上げていた。
 寝転がっての自転車漕ぎストレッチのポーズと言えば分るだろうか。俺の方からは、魅音の尻と足しか見えない。
 まさか、まさか……。
 不安と期待の入り混じった、じっとりとした目で次のアクションを待っていると、全く持って期待通りの出来事が起こった。
 魅音はゴアパンツの腰に手を掛けて、するりとズボンを脱ぎ始めたのだ。
 ブラと同じ色のショーツに包まれた、形の良い二つの果実が――
「って阿呆かーーっ! おぉお俺っしし、下で水汲んでくるからっ! それ飲んで、お前ちょっと目ぇ覚ませ馬鹿野郎! それまでに絶対服着てろよっ。いいな、絶対だぞっ。 うわああぁん」
 もう限界だ。これ以上ここに居たら、何をしでかすか、自分でも責任が持てない。
 四つん這いで部屋から飛び出し、転げ落ちるように階段を下りた。

 くそう、ちくしょうっ。何だってんだ一体!
 キッチンに転がり込み、ガブガブと水を飲む。いっそ頭っから被りたい気分だ。
 二杯目の水を飲み干して、ロングTシャツの袖でグイと口を拭う。
「っはーっ。……うぅ、少しは収まった……でも、参ったな。どうするよ」
 あんな状態の魅音を、こんな時間に園崎家まで連れて帰る訳にも行かないだろう。
 自転車なんて乗れる訳無いし、外灯の無い真っ暗な道を、千鳥足の馬鹿たれを連れて歩いて行くのは危険だ。
 それに何より、お魎さん入院してるからな。家に送った所で誰も居やしないだろう。となると……
 うちに泊めてやるしか、無いよなぁ。
 詩音辺りに電話を入れて、口裏合わせてあいつの部屋にでも泊まった事にして貰おう。
 あいつはあのまま俺の部屋に寝かせて、俺はリビングのソファーででも寝るか。
 別に格好つけてる訳じゃない。そりゃあ正直、ムラムラ来てる。今だって男の事情で、腰が「く」の字に曲がったまんまだ。
 惚れてなけりゃ、あんな状況だったらきっと襲ってた。
 あれだけ挑発されて、思春期まっさかりの男子が黙っていられるかってんだ。
 でも絶対に嫌だ。惚れた相手との……その、初めてがだな、『覚えてない』とか言われてみろ。
 絶対死ぬまで後悔する。それだけは絶っ対に嫌だ。
 だから、我慢だ息子よ。後でちょっと、元気玉出しとこうな。
 レナは夕飯のおかずを用意してくれていた。
 魅音は、別のおかずを用意してくれた。良い嫁さんになる……か?

 詩音に連絡を入れたら、案の定これでもかって位にからかわれた。
 話の途中で無理矢理電話を切りリビングを出てから、水を用意する為にもう一度キッチンへ戻った。
 氷をぎっしりと詰め込み、キンキンに冷やした水を満たしたピッチャーをお盆に載せて、こそこそと俺は階段を上がっている。
 ……何で忍び足なんだよ。これじゃあまるで覗きに行ってるみたいじゃないか。
 途中からわざとらしい位に大きな足音を立てて階段を登りきった。一呼吸置いて気持ちを整え、扉を叩く。
「魅音。水持って来たぞ。――服来たか?」
 返事が無い。扉に耳を当てて中の様子を伺ってみるが、何の音もしない。
 寝ちまったのかな。だったらこのままそっと寝かせとくのが一番か?
 紳士、危うきに近寄らずってな。……何か違うな。
 ――あ、だめだ。
 窓……開けっ放しじゃないか。
 幾ら今日が暖かいっつっても真冬である事に変りは無い。夜中に窓を開けっ放しで、あんな素っ裸に近い格好で、腹丸出しで寝てたら、間違いなく風邪をひく。
 しょ、しょうがねえなあっ。仕方なくだからな、仕方なくっ。

「べ、別に見たいわけじゃないからな」
 誰にとも無く、情け無い言い分けを呟き震える右手で、そぅっと扉を開いた。
 三十センチ程開いた所で心臓が一つ跳ねた。
 何も身に纏っていない、眩しい太ももが目に飛び込んで来たからだ。
 やっぱ着てねえ……。うう、嬉しいやら先が思いやられるやら、だ。
 できるだけ魅音の方を見ないようにして部屋に入った。やっぱりコソコソしてしまう。
「み、水持って来たぞ」
 壁に話しかける様にして声を掛けて見ても、やはりリアクションは無い。完全に寝てるな、こりゃ。
 あーくそっ。
 仮にもここぁ男の部屋だぞ!? 下着姿でなぁ! グースカ寝る馬鹿がっ! どこの世界に居るんだよこんちくしょおーっ!
 ピッチャーとグラスを載せたお盆を床に置き、壁に張り付いてカサコソと蟹のように移動して窓を閉めた。
 とりあえずこれで一安心か。なら、俺の理性の為にも長居は無用だ。とっとと退散して毛布被って寝ちまおう。
 また蟹の様になって部屋の外周を回り、扉まで移動。
 自分の部屋だって言うのに、何て居心地が悪ぃんだろう。
 正直もう、グッタリだ。……一箇所を除いて。
「窓閉めといたからな。水も扉のとこに置いといた。目が覚めたら勝手に飲め」
「うん」
「――え?」
 まさか返事が返ってくるとは思わなかった。
 予想外の出来事に思わず振り返ってしまったのは、大きな失敗だったとしか言いようが無い。だが後悔しても、もう遅い。
 俺は見てしまった。
 最初に目に入ったのは、また太腿だった。俺に向けてまっすぐに伸ばされた左足に、少し曲げた右足の膝が乗っている。
 足首から登るにつれて肉感を増すラインは緩む事無く、しなやかな曲線を描いている。
 やがて腰を頂点にそのラインは急激に絞り込まれ、ウェストは卑劣なまでのくびれを見せる。
 驚くほどに、白い。
 その肌が、酒気でほんのりと染まっている。
 間抜けに半開きになった口を閉じる事も忘れ、焦点の合わない視線は、その肌に吸い込まれ続けた。
 ささやかな面積を覆う若草色の生地はひどく無粋な物に見え、腹立たしさすら覚える。
 純粋に、綺麗だと思った。後悔する程に、壊してしまいたいと思った。
 大切に壊したい。
 相反する感情が俺の中でドロドロに溶け合い、熱を帯びた頭は思考を停止して行く。
 完全に自我自失、混乱の極みに落ちた俺は、おかしな妄想を描き始めた。


 灼熱の砂漠を一人、ラクダに跨り当て所も無く彷徨う旅人。
 焦がれる太陽に焼かれ、眩しいほどに白い砂に目を細める。
 目の前に広がるのは、絹のように滑らかな砂の稜線。小さな砂丘を一つ越え、大きくてなだらかな砂丘の頂に辿り着くと、旅人は足を止めた。
 ベルトに留めた皮の水筒の蓋を開け、口に運ぶ。温い液体が喉を鳴らし、失われた水分が体に補充される。
 だが旅人の渇きは癒されない。
 乾く。体が、心が。果て度の無い旅に焼け付き、底からじゅうじゅうと音を立てて乾いていくのだ。
 砂漠旅の禁戒を犯し、手持ちの水を全て飲み干してしまいたい衝動に駆られる。
 干乾びた唇を拭い、旅人は皮水筒の口をぎゅうと閉め、再び歩を進め始めた。
 知っていたから。例え禁戒を犯した所で、この渇きが癒される事はないと。
 渇きを埋める物は、水ではないのだ。求めている物は、潤いではないのだ。
 登りの時とはうって変わり、下り坂は丸みを帯びながらも、かなりの急勾配だった。
 覚束ないラクダの足元にばかり目を落としていた旅人の視界を、色彩が掠める。
 掌を眉に当て庇を作り、細い目を更に細めて丘の麓に目を向けた。
 見渡す限り白一色の砂の世界。空すらもその色に侵食されたその中で、若草の色はそこに有り、希望の様に、旅人の瞳を揺らしていた。
 ――オアシス。
 それは命を繋ぐ場所。緑の木々は太陽からの試練を遮り、生命を育む湖が輝く場所。
 転げるように旅人はラクダを走らせた。坂の半ばでラクダが足を折った。旅人は自らの足で駆けた。
 何もかもを捨てて駆けた。足が藁の様になっても、旅人は駆けた。その瞳に、若草のオアシスだけを映して。
 そこに全てが在るかの様に。求める物が在るかの様に。己の渇きを満たす物が、そこに在ると信じて駆けた。
 オアシスが蜃気楼で無かった事は、旅人の幸運であった。瑞々しく生命に輝く木々は若草色の葉を確かに揺らし、囁き合っていた。
 もう少しで手が届く。あと少し歩を進めれば、この狂おしい渇きを満たす事が出来る。
 鉛の様に重たくなった足を引き摺り、旅人は必死に手を伸ばす。
 揺れる葉の一枚でいい。微かにでも指先が触れれば、この足枷はきっと外れ、あのオアシスへ飛び込める。何故かなど分らない。だがそう確信していた。
 泥の様に重くなったその手を、必死に伸ばす。永遠の一瞬を経て、震える指先が、遂にその若葉に触れ――


「うぅ~ん……ムニャ」
「――……はっ!?」
 魅音の声を聞き、寸での所で俺は砂漠の旅から帰って来た。
 ミロのヴィーナスが寝転がった様な姿勢で眠る魅音。その足元から、四つん這いになって「オアシス」に伸ばしているその手は、旅人の物ではなく俺の右手だった。

だいぶつさん画 選択肢のB挿絵


「ッ~~~~!!」
 心の中で叫び声をあげ、口を押さえて俺は転がるように壁まで後ずさった。
 危ねえ危ねえ危ねええええぇぇぇっ!
 何やってんだバカ! お前ついさっき「惚れた相手との始めては云々」って講釈たれてた紳士だろうがっ!
 舌の根も乾かない内に、このアホタレがっ!
「ぉ゛う゛っ……」
 勢い余ってオットセイに鉄槌を喰らわせてしまい、もんどりうった。
 くうぅ、今日は何て試練の日なんだ。これがもしオヤシロ様の思し召しだってんなら、俺は縁結びの神様だなんて絶対に信用してやらねえからなチクショウ!
「う……ん」
 また魅音が小さく呻いて、寝返りをうった。……もしかして、さっき俺が返事だと思ったのも……寝言?
 スヤスヤと、気持ち良さそうに眠る魅音。
 くそ。あられもない姿で俺を散々悩ませている癖に、完っ璧に安心しきった様子で幸せそうに眠りやがって。

 ……何だか無性に腹が立ってきた。
 誰の所為で俺がこんなに悶え苦しんでると思ってんだこのスカポンタンめ。
 あ、このやろ。人の布団に涎垂らしやがった。
 ふふふ、許せねえ。これは全く許せんよなあぁ。
 そうだよ。元はと言えば俺が悪い事なんて、これっぽっちもありゃしないじゃないか。
 じゃあ悪いのは何だ? 悶える子羊たる俺を苦しませている、悪の根源は、一体何だ?
 それは――乳だ。
 我侭な質量を誇るこの乳が、破廉恥にまろび出ているのが諸悪の根源だ。
 心配するな魅音。悪いのはお前じゃない。悪いのはそう、その乳だ。俺は人を許す。「乳を憎んで人を憎まず」いや全く孔子は上手い事を言ったもんだ。
 よし、原因はハッキリしたな。ならばやるべき事は一つだ。
「悪は処分だ。きっちり『対処』してやらなくちゃなぁ。ふふっ。フフフフ……ふぅははははははっ!」
 両手の指をワキワキと蠢かし、薄い三日月を唇に浮かべ、俺は魅音へとにじり寄った――。

 -----------------------------------------------

 逆転。そう呼ぶのが相応しいのかどうか。つい数十分前に魅音が見ていたであろう光景を、俺は見ている。
 体の下に柔らかな感触。俺は魅音の上に馬乗りになっていた。
 魅音の太腿の温もりを、ズボンの生地越しに感じる。
 自分が今、どんな状況に置かれているのかも知らず、安らかに眠る魅音。それを見下ろす俺。
 早鐘の如く高鳴る鼓動は、淀んだ征服欲を加速させ、汗ばむ掌の震えが止まらない。
「お……お、お前が……悪いんだからな」
 最後の言い訳を吐き出し、俺は震える手を伸ばした。

 さっきの俺と同じ、万歳の格好で眠る魅音。その脇に右手をついて自分の上半身を支えつつ、空いた左腕を、腋の下から魅音の背中に回した。
 肌の柔らかさに息を呑みつつ、そっと、少しだけその体を抱き上げる。
 自然と魅音の頭が仰け反り、俺の眼前に、ほっそりと色白な首筋が曝け出される。
 ゾクリと黒い電流が背筋を駆け登る。今なら吸血鬼の気持ちが分る。
 この白さを、俺の色で汚したい。『染めたい』なんてもんじゃ、済まさない。
 く……不味い。予想以上に……キツイ……抑えが、効かね……。
「うううぅっ」
 これ以上見つめている事に耐えられず、俺は体を起こして力任せに魅音の体を抱き寄せた。
 布団の上に坐り、抱き合う二人……いや俺が、一方的に抱きしめて……。
 視界から魅音は消えた。
 だけど右肩に感じる頬の柔らかさが、俺を刺激する。
 首筋に掛かる吐息の熱さに、思考が溶ける。
 俺の胸と、魅音の胸が重なり合う。
 抱きしめた背中はこんなにも薄くて儚げだと言うのに、押し潰された胸は何でこんなに温くて柔らかいんだ。
 息苦しい。こんなに呼吸は早いのに……溺れてしまいそうな程に。
 温かさをもっと感じたくて、抱きしめた左腕に力が篭もる。
「あ……」
 その指先が……触れた。乳房に。ほんの微かだけど、確かに、柔らかな弾力に跳ね返された。
「っだああぁぁ畜生ぉっ!」
 駄目駄目駄目駄目だっ。あぁ限界限界、とっとと終らせる!!!

 魅音を抱えたまま、タンスから引っ張り出して来た寝間着を右手で手繰り寄せ、背中を見ないようにして魅音に被せる。
 その後、どうやって腕を通したのかはハッキリ覚えてない。何度かマシュマロに触れてしまった気がする。
 ズボンを履かせられたのは奇跡だ。間違いない。よくやった俺。聖人君子と呼ばれても良い筈だ。
 悪の根源は全て封印した。『対処』としては、ベストだと思う。そうだよな? ……頼む誰でも良い。そうだと言ってくれ。
 全てがあまりに衝撃的で、脳裏から映像が消えてくれない。
 白く艶かしいふくらはぎ。引き締まった腿。キュッと上向きに形の整ったおし……ああもうっ!
 何てこった……。まだ俺は服を脱がせた事すら無いってのに……「着せプレイ」なんてマニアックな趣味に目覚めてしまったじゃないかっ。
「ううぅ……恨むぞ、魅音」

 もうこれ以上何も見たく無いとばかりに、エロボディに掛け布団を掛ける。
 俺がこんなに苦労して貞操を守ったってのに、きっとこいつは何にも覚えちゃいないんだ。
 何だか本当に割に合わない。不公平だ。
「……この位の報酬は……良いよな」
 前髪を掻き揚げて、少し狭目のおでこに、そっと唇を落とした。
 必要経費としても安すぎる位だ。これだけでは気がすまなかったので唇を離した後、鼻の頭を人差し指でグリグリと突付いてやった。
「ぅにゅぅ~。やぁ…ん」眉間に皺を寄せてイヤイヤと首を振る姿を見て、少しだけスッキリ。
 ふん。まあこの位で許してやろう。
「――でもまあ……サンキュウな。来てくれて」
 軽く頭を撫でた後部屋の電気を落とし、俺は元気玉の処理へ……もとい、一階のリビングへ降りた。

 -----------------------------------------------

 ピピピピッ。ピピピピッ。
 九時半を指した目覚まし時計が軽やかな電子音で喚き立て、俺の目を覚まさせた。
 毎回欠かさず主人の指示した時刻に起こしていると言うのに、いつも乱暴に頭を叩かれ、その声を止められる目覚まし時計ってのは、随分損な役割だと思う。
「ん……っ。ふあぁ~。あふ……」
 普段と違う場所で寝たせいか腰と背中が痛い。リビングのロングソファから両足を降ろし、両腕を伸ばして大きく伸びをする。
 おお、気持ち良い。
 パキパキと音を立てて背筋を伸ばし、東側の窓から差し込む冬の薄い朝日に目を細めた。
 普段よりも遅い目覚め。この二時間の贅沢が、休日の一番最初の喜びなんだよな。
 スリッパを履き、寝癖だらけの頭を掻きながら洗面所に向かう。洗面所の引き戸を開けると、少し肌寒い空気が流れ込んできた。
 温水器のスイッチを入れ、待つ事数秒。蛇口から流れる水は白い湯気を立て始める。
 人肌に温もった気持ちの良い水を両手に掬った所で、二階から悲鳴が轟いた。
 意味不明の叫び声に混じって、「ここ何処?」やら「誰の寝間着よこれ」やら聞えてくる。



 ……ここで一旦放送中止! 
はい、素晴らしく中途半端な所でごめんなさいw
この後当然朝の展開になります。なりますが、ちょっとアレなので、覚悟する時間を下さいw
(いや、そんな事言いながら……肩透かしなのかな……?)
必ず週末までに投稿しますから! で、では! (遁走
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テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ああああああ!!戻ってくれぇぇぇなのです!!!

それが読み終わった私の第一感想なのです。はい。
どんだけエロオヤジなんでしょう、私は。

選択のBを気になって仕方がないので遊びに来ちゃいました。
途中の砂漠比喩はよかったです。てかあの状況に似合いすぎです。

朝の展開に超☆気になっていますので
早く戻ってくださいよ~~~(>3<)
【2008/03/12 15:32】 URL | 銀之羽 #64owOXpE [ 編集]


圭ちゃん、なんて素敵な…と思ったら、やっぱり萌えの伝道師でしたね(笑)
読み応えあるし(長いのに読みやすくて飽きないです)面白かったです。
圭ちゃん、マニアックな趣味おめでとう(´▽`)
二人とも可愛くて、続き楽しみです*
【2008/03/12 20:39】 URL | しゆ #SFo5/nok [ 編集]


圭一ぃ!
よく我慢した! 感動した!!
暗喩表現出まくりで萌えつつ吹きました。元気玉の処理wwwww
しかし、これで終わりではないとは…
朝の展開一体どうなるんだw
【2008/03/12 23:37】 URL | だいぶつ #gIYQI5Sw [ 編集]

感想
圭一さんは偉いですね。
魅音さんはだらしないですが。
さてさて、次はどうなるやら、魅音さんは有らぬ疑いを圭一さんに持たないと良いですが・・・?
【2008/03/13 02:14】 URL | 影法師 #E1H58A1s [ 編集]


 皆様どもどもです!

>銀之羽さん
どうもどうもいらっしゃいませです。
もう後は仕上げだけなので、近い内に戻ってきますよw
砂漠のシーンは、書いてて楽しかった所ですw

>しゆさん
楽しんでくれてありがとー!
続きは純愛路線(のつもり)ですが……ちょっと可愛くないかもしれません(^^;

>だいぶつさん
オラの元気を圭一に少し分けてやりましたww
だいぶつさんは、我慢した圭一を怒るかと思ってましたよ。
朝の展開は……受入れてもらえるかなあ……。

>影法師さん
引っかいちゃだめですよw
大体こう言う場合、事実はどうあれ、男が悪者になりますよねw
さて、どうなるでしょ。

コメント下さった皆さん、拍手を下さった皆さん、
感謝サンキューですよー!

【2008/03/14 04:28】 URL | cvwith #- [ 編集]


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プロフィール

cvwith

Author:cvwith
岡山に生息。
カレーは混ぜてから食べる派です。
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を中心に、ショートストーリー(SS)を書いています。
「うみねこ」もちらほらとやってます。
いずれオリジナルも書いてみたいと野望を持っております。

メアド : kdksf1@mail.goo.ne.jp
「@」を半角にして、ご使用ください。
感想・ご意見・イラストなど随時激烈に大歓迎中です!



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