妄想の地図帳
 「ひぐらしのなく頃に」が好きなおっさんが、二次創作やオリジナル物語を書いたりするとかしないとか。
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今週はお休み~
 やあみんなこんばんわ。
今週は部活はお休みなんだよね。
来週のお題は、本日発売のひぐらしアンソロに載せて頂いたおいらのSS。
その中から、「あざとい」シーン限定で、好きなシーンをイラストで描く!!
となっておりますwwwwww
当然ポロリもあるでしょうっ。皆様お楽しみにw

……と、お知らせだけでは寂しいなあ…と思っていたら、コボ君から「てきとうなの」が送られてきましたっw
とくとご覧あれっ
べあちょーちょ

黄金蝶と化し華麗に舞うベアトちょーちょ様っす!
どうすかこれwww
これちょっと萌えキャラじゃね?ww
いやあなかなかナイスな「てきとうなの」をありがとうコボ君!

んでもってだいぶつさんからも「てきとう」じゃない作品が到着!
下はブルマ


いや、ふつうに部活レベルですからwww
かっこいいじゃないかー。最近対戦でもかっこいいしな! 
ちくしょー、今度は勝つからなーっww

で、おいらも適当なのを上げてみました。
ってもおいらのは今回は絵じゃないんですよね。
だいぶつさん達とモンハンで燃えてた頃に、こっそり書いてて中途半端で終わったモンハンSSを、捨てるのも勿体無いのでアップしてみました。
ちっとも完結してないし、山も落ちも無いのです。
しかも身内のキャラを登場させて楽しもうと思っていたのに、ダイブツさんのキャラがやっと出てきた所で終わってますww
まあ最終推敲もされておりませんが、「てきとうなの」なのを、お暇ならどぞ~


 砂漠の熱風は青空を踊り、山吹色の砂海(さかい)を白く波立たせていた。それを縦に切り裂き、揚々と帆を張る古い砂上商用船『荒稼ぎ号』の上に、僕は居た。
 照りつける太陽に焼かれる僕の頬を撫でる風は、きっと心地良いものなのだろう。けれど今の僕にそれを感じる余裕なんて無かった。
「おい譲ちゃん、見えたぞ。お待ちかねのロックラックの街がよ」
「ああ、つ、着きまし……うぷっ」
「お前、よくそんな様で密航なんて考えついたな。甲板にするんじゃねえぞ。吐くんなら砂海だ砂海。良い撒き餌にならぁな。がはははははっ」
 げぇげぇやっている僕の目に映る、生まれて初めて見る故郷以外の町。
 縛られた日常を飛び出し、初めて自分で選んだ自分の人生。
その新天地の記憶は、胃液の臭いと共に残るという、苦い幕開けとなった。

『モンスターハンター ――傍らの物語――』

------------------

「はぁ…はぁ……ふぅ」
「落ち着いたか? ん?」
「は、はい。……何とか」
 ロックラック港に停泊した『荒稼ぎ号』から転げ落ちるように這い出た僕は、また二回程砂海の魚に餌を撒いた後、やっと落ち着きを取り戻した。
 ああ、大地って素敵だ。揺れない地面がこんなに偉大な存在だったなんて、今まで考えた事も無かった。
 僕は黄色い砂の混じる港の石畳に腰を下ろし、ふぅと一息を吐き、辺りを見渡――そうとした所で、船長に頭をゴツンと叩かれた。
「あ痛っ」
「馬鹿ヤロ。落ち着いてる暇があったら少しは働け、この密航者。積荷はたんとあるんだぞ」
 見ると船長は肩に大きな麻袋の包みを抱え、それよりも大きな麻袋を積んだ荷車を押していた。
 一緒に乗っていた三人の船員さん達も、大きな積荷を黙々と降ろしている。
「わわ、ご、ごめんなさい」
「喋る前に働けっ。ほれほれ」
「は、はいっ」
 船に掛けられた渡し板を駆ける足取りはまだふわふわとして、覚束なかった。
 けれど僕の心はすっかりと毒を吐き出し終え、新天地の期待と不安で一杯なのだった。

―――――――

 大陸のど真ん中に位置する広大なロックラック大砂漠。延々と広がる山吹色の砂漠に、乾いた岩肌をさらす山が点在する荒涼とした土地。
 延々と続く砂の海は、踏み入れた者の方向感覚を易々と奪い去り、じりじりと照りつける太陽がその体力を容赦なく奪う。
 緑ある植物が育つ環境であろうはずも無く、身を寄せる木陰も無ければ、渇きを潤す果実も無い。飢えを凌ごうにも、食料と為り得る動物が存在しない。文字通り死の土地だ。
 大陸を北から南、もしくは東から西へ縦・横断しようとした場合、馬車等を使用しロックラック大砂漠を大きく迂回して、大きく時間を浪費するか、思い切って砂上船か飛行船を使用して砂漠をするしかないのだけれど、ロックラックの街が生まれるまでは、交通手段は迂回の一択だったらしい。
 何故か? 砂漠が大き過ぎるせいで、砂上船はもちろん、飛行船ですらも燃料がもたないからだ。
 だけど今から数十年前、死の砂漠のほぼ中心部に、青々と色を落す広大な湖が発見される。
 商人達は大きな犠牲を払いながらも、その湖の周りにオアシスの街を建設。死の砂漠において唯一人間が存在する事を許される場所、ロックラックの街が誕生したって訳。
 この街の存在により、人々の交易は劇的に進化した。人や物資が大陸を横断する日数が、実に従来の半分以下になったのだ。
 砂上船にせよ飛行船にせよ、必ずロックラックの街で燃料や食料を補給する。
 当然の結果としてロックラックには様々な人種や情報、物資が行き交い、『世界の金品でロックラックを通らない物は無い』と言わるほどの貿易街として、今に至っているのである。
 行き交う人々の中には『モンスターハンター』の姿も、大勢見受けられた。
 モンスターハンターって言うのは、文字通りモンスターを狩り、その肉や素材を売って生活している人達の事。僕にとっては、おっかなくて近寄りたくない人達でしかないけれど。
 彼らは世界中の様々な場所に行き、様々なモンスターを狩るのが仕事なので、ロックラックの様に交通網が集中する貿易都市は、重要拠点となる街という訳だ。
 だから貿易都市には、大体ハンターズギルドがある。僕の住んでいたドンドルマにも大きなハンターズギルドがあったけれど、近づいた事がないから良くは知らない。
 僕がへっぴり腰で積荷を降ろしている最中にも、何組ものハンター達が船から港へと降りてきていた。

―――――――

「ここにもハンターが沢山居るんだ……」
「交易あるところにハンターあり、だ。そりゃあゴロゴロ居るさ」
 そう言うこの人は、ドノヴァン船長。ロックラックを中心に北から南、東から西へと飛び回っている貿易商人で、砂上商用船『荒稼ぎ号』の船長さんだ。
 扱う商品は行動範囲以上に幅広いらしく、食料品や衣料品はもちろん、高級インテリアから軍事用品、果ては盗掘品や余り大きな声では言えない代物も扱っている……らしい。
 だからだろうか? 密航者の一人や二人、どうと言う事もなく取り扱ってくれた。非合法な事には寛容な、ちょっと危険な貿易商人さんだ。
 その分金銭には厳しい。密航した僕をロックラックの警備団に突き出す気は無いらしいけれど、
「乗船代は働いて返してもらうぜ」
 と言う事で、荷物の陰に隠れていた所を見つかって以来、船乗り見習いとしてこき使われる事になった。
 だけど僕は筋骨逞しい船長さんや船員さん達と違い、ヒョロヒョロの案山子坊主だ。おまけに船に乗った経験が無い。
 甲板のモップ掛けをすれば砂海に転げ落ちかける。緩んだ荷紐を縛り直せば荷物が転げ落ちる。
 更に酷い船酔いでフラフラで、どう控え目に見ても代金の足しになる働きが出来てたとは言い難い有様だった。
 唯一の取り柄である料理だけは認めてもらえた。だけどそれだけでは、ドンドルマからロックラックへの乗船代にはとても足りないみたいで。
「……しょうがねえなぁ……まあ残りの代金は向こうに着いてからってとこだな」
 がりがりと頭を掻きながら船長さんがそう言っていたのを思い出す。
 ――僕はこれから何をさせられるんだろう……?
 僕ぁ農耕ならできるけれど、お金を稼ぐ方法なんて一つも知らないぞ。
 農耕はもちろん立派な職業だ。だけど多分ドノヴァン船長は、アオキノコが立派に育つまで気長に待ってはくれないと思う。
 ……もしかして、どこか怪しげな場所に売り飛ばされたりするんだろうか?
 それは流石に辛い。奴隷の様にこき使われる毎日が嫌で、ドンドルマから逃げ出して来たというのに、それでは元の木阿弥じゃないか。
「うぅ、嫌だなぁ……はぁ」
「ん、何だ? 嬢ちゃんはハンター共がお嫌いか?」
「僕は男です。……いや、まぁ……はは」
 力仕事の出来ない僕を、ドノヴァン船長はお嬢ちゃんと呼ぶ。港を行き交うハンター達をボンヤリと眺めながら呟いたので、ドノヴァン船長は僕の溜息の理由を勘違いしたらしい。
 確かにドンドルマに居たハンター達は乱暴な人が多くて、あまり好きじゃ無かったけど……まあ僕には無縁の人達だし、そんなに気にした事は無い。
「そんな事も言ってられんぞ嬢ちゃん。なんたって、これからお世話になるんだからな」
「……?」
「がははははっ。まあ細けぇ話は後だ後! まずは腹ごしらえといこうじゃねえかっ」
 ばしんと僕の背中を叩いて、ドノヴァン船長は豪快に笑いながら酒場へと続く道を歩き始めた。
 僕はゲホゲホと咳き込みながらその後に続く。
 ――お世話に? 僕が? ……ハンターさんの?


「僕が……ハンターに!?」
「おおそう――」
「無理ですよ!」
 真昼間から大勢の酒飲み達で賑わう酒場に、僕の裏返った叫び声が響く。
 ハンターなんて冗談じゃない出来る訳がない無理に決まってる! だって僕は刃物なんて、包丁とカマ以外握った事がないんだ。
 剣なんて使ったら、きっと自分の足を斬ったりするに違いない!
 幼い頃、同い年の友達が棒切れとツタの葉で作った弓矢で遊んでいる間、僕は朝から日が暮れるまで畑を耕したり、アオキノコの菌を培養したりしていたんだ。
 ボウガンなんて使ったら、弦で自分の指を飛ばしてしまうに違いない!
 僕がハンターになんてなったら、あの大人しいケルビの角で突かれて大怪我をするのが関の山だ。
「ぼ、僕は嫌ですからね。絶対!」
「お? 何開き直ってんだ密航者」
「う……ご、ごめんなさい。それはちゃんと償います。で、でも何で密航の罪滅ぼしが、ハンター就職って事になっちゃうんですか?」
「そりゃあ、嬢ちゃんが金持って無いからだろ。警備団に突き出されたくなけりゃあ、金払ってもらわないとなぁ」
「僕は男ですっ。そ、そりゃ確かに今は一文無しです。……けどっ、皿洗いでもゴミ清掃でも何でもやって、必ず返します! その方が絶対確実にお金を払えますってば。僕がハンターなんかになったら、直ぐに死んじゃって、お互い大損ですよ!」
 我ながら情けない事を精一杯力説すると、ドノヴァン船長は頭を掻きながら、そりゃあそうだなぁと呟いた。
 納得して貰えたとホッとしたのも束の間、ドノヴァン船長の口から出た言葉は、「しかしなぁ」だった。
「無理なんだよ、それ」
「な、何がですか」
「就職だよ。皿洗いやら、ゴミ拾いやら。ついでに言やあ、ここでウェイターする事すら無理だな」
 ごっごっと景気良く喉を鳴らし、ドノヴァン船長がホピ酒を一気に飲み干す。ウェイターを呼び二杯目を注文する船長に、僕は当然の疑問を投げかけた。
「何でですか。僕、そっちの方がよっぽど得意ですよ?」
「あー……お前な、『移国証』持ってないだろ? 密航だもんな」
「い、移国証?」
 初めて聞く単語だった。ドノヴァン船長が言うには、国を移動する際には『移国証』とかいう物が必要で、それがないと自分の生まれた国以外での市民権を得ることが出来ず、一部例外的な職業を除くと、真っ当な職には就く事は出来ないのだそうだ。
「その例外的な職業の一つってのが、ハンターって訳さ」
「そ、そんな……。で、でもですよ? 例えハンターになったとしてもですよ、最初の仕事で死んじゃったり大怪我しちゃったりしたら、意味無いと思いません? ね、ね?」
「いやそこは心配すんな。無事ハンター査定に受かりゃあ、支度金が貰えるのさ。それをそっくり俺が貰う。それで無賃乗船の件はチャラ。万事解決って訳だ。どうよ、心配無ぇだろ?」
「そ、それじゃ僕は丸裸でモンスターと戦う事になるんじゃあ」
「馬鹿正直にやるこたねえよ。すぐ辞めちまえば良いじゃねえか」
「い、良いんですか? 何だか詐欺っぽいですけど……」
「相手はでっけぇ組織だ。少々の無駄な費用、痛くも痒くもねえさ。個人で貧乏商業船やってる俺の船に密航しといて、しょうも無え事気にすんじゃねえよ」
「んっ……うぐぅ」
 それを言われると何も言い返せない。けど、それでもやっぱり納得がいかなくて、何か良いアイデアは無い物かと思考を巡らせる。
 だけど此処は右も左も分らない、見知らぬ土地ロックラック。身寄りどころか、知り合いは目の前に居るドノヴァン船長だけなのだ。
 今まで大人の言いなりに生きて来ただけの僕に、船長が薦める方法以外の良い方法が見つかる筈も無かった。
「がははははっ。情けねえ面すんなって嬢ちゃん。まあ俺に任せて、今夜は景気づけに一杯行けっ。ほれっ」
 俯いて悩む僕の目の前に、ぐいと木製のジョッキが突き出される。中身は勿論、程よい苦味とコクで後味スッキリの大衆酒、ホピ酒だ。
 顔を上げると、テーブルの上の空のジョッキがあっという間に二つに増えていた。向いに座る船長は砂漠焼けの浅黒い頬を赤く染め、三杯目のホピ酒を高らかに掲げ、やたらと綺麗な白い歯を見せてニッカリと笑っていた。
 その笑顔を見た途端、肩の力がストーンと抜けてしまった。殴られ、怒鳴られて生きて来た僕にとって、大人の男は恐怖の対象だった。
 大人の男に逆らえば、痛い思いをさせられる。その思いが心の奥に沁み込んでいる僕が、大人の船に密航し、見つかってしまった。
 正直、どんな酷い目に合わされるのかとビクビクしていた。それが……こうして酒を勧められ、笑顔で迎えられている。
 適当でいい加減なだけなのかもしれない。でもそれは見方を変えれば、大らかで気立ての良い人と言う事なのかも?
 ――とりあえず、この人の言う通りにしてみよう。どの道選択の余地なんて無いんだし、知り合いはこの人だけなのだから。
 安心すると、小さいながらも肝が座って来る。余裕のできた思考回路が、鼻腔をくすぐるモスポークの香ばしい香りに反応し、僕のお腹が音を立てた。
「がはははは。腹減ったかお嬢ちゃん! だがまあ待て。喰うのは飲んでからってのが相場だ! さあ乾杯だっ」
 屈託無く笑う船長に釣られて、僕の頬も、少しだけ緩んだ。
「何に乾杯するんですか?」
 差し出されたジョッキを手に僕が聞くと、船長は更にニヤリと笑い、やおら席から立ち上がると、店のぐるりを見渡しながら突然叫んだ。
「何に乾杯するかだってぇ?!」僕はビックリして危うくホピ酒を溢しそうになってしまった。
 が、目を白黒とさせたのはどうやら僕だけ。いつの間にやら店の客ほぼ全員が、船長に向ってジョッキを掲げていた。
「そんなの決まってるじゃねえか!」
 船長が一つ息を吸い込む。そして全員が一斉に。
「「この世に酒がある事に!」」
 地鳴りの様な「乾杯!」の合唱が、オープンテラスの酒場を越え、夜の砂海を渡っていく。
 賑やかな笑い声に、ジョッキのぶつかる音。けして上手くないけれど心地良い歌声と、流れ行く砂の香り。
 見ず知らずの者同士が、まるで旧知の友の様に肩を組んで酒を酌み交わす……その中に、僕は居る。
 新しい人生に飛び出したんだと言う事を僕はこの時、改めて実感していた。

 翌日の昼過ぎ、僕とドノヴァン船長はハンターズギルドへと向かった。
『向かった』と言ったけれど、実は何処にも行ってなかったりする。
 ギルドの受付カウンターは酒場にあり、僕達はあのまま酒場で飲み潰れていたからだ。
 二日酔いでズキズキと痛む頭を抱えて訪れたギルドカウンターでは、若い女の子が僕達を迎えてくれた。
 ハンターズギルドなんてヤクザな所は、当然強面のおじさんが受付をしているものだと思っていたので正直少し驚いた。でも少なからずホッとした。
 年は僕とそんなに変わらないだろう。白い肌に黒のお下げ髪が良く似合う、可愛らしい顔をした女の子。
 ドノヴァン船長は、お世辞にも上品とは言えない顔立ちだ。顔も体も、溶岩石から削り出した様な筋骨逞しい大男である。
 そんなおっさんが、二日酔いのしかめっ面で「おぅ。登録よろしく」なんてぶっきらぼうにテーブルにのし掛かっているというのに、彼女は笑顔でケロリと受け流している。
 きっと今まで、何人もの犯罪者崩れのハンター志望者達を受け付けてきたんだろうなぁ。外見とは裏腹に、肝がどっしりと坐ってる。
「それではお名前と国籍を頂けますか?」
「俺はロックラックのドノヴァンだ。あー待て待て。登録するのはこっちの細っこい嬢ちゃんでな、名前は……おい、何つったっけな?」
「えぇ? 非道いなぁ……。トラントです。生まれはドンドルマ」
「ドンドルマのトラント様ですね。……『移国証』はお持ちですか?」
 僕はチラリとドノヴァン船長の方を覗き見る。船長は特に気負った風も無く、顔の前に片手を立て、拝む様な仕草でいかついウィンクをした。
「悪ぃな、こいつこう見えてもちょっと訳ありでな。『移国証』無いんだわ。俺が保証人って事で頼む」
「はい了解しました。それではドノヴァン様の『身分証』か『移国証』の提示をお願いします」
「おう、俺ぁ真っ当な貿易商人だからな……っと、何処だったかな……ああ、あったぜ。ほれ」
 汚いズボンのポケットをごそごそと探り、やっと見つけた油塗れの『商人用移国証』を、自慢気に机の上に放り投げる。
 彼女はそれを何かの資料と照らし合わせて丁寧に確認し、本物だと判断すると、ニッコリと笑う。
「はい。それではロックラックの貿易商人ドノヴァン様を保証人として、トラント様のハンター契約手続きを取らせていただきます。よろしいですか?」
「おうっ。よろしく頼まぁ!」
「あ、お願いします」
 僕はペコリと頭を下げた。
 今ここに、僕の第二の人生は幕開けした。……というのに何らの感動も無いのは、やはり行き当たりばったりで飛び出した所為だろうか。
 苦労無い所に感動無しって、誰かが言ってたっけ。不自由は十分に味わってきたんだけどな……。
 それよりも僕の興味は、むしろ目の前の彼女に向けられていた。
 勘違いしないで欲しいのだけれど、別に僕は女ったらしって訳じゃない。田舎では労働と睡眠以外の時間なんて殆ど無かったから、女の子と話をする機会が無かったのだ。
 だからどうしても、目の前に同年代の女の子が居ると意識してしまう。
 大きな目にスキッと通った鼻筋に、少し砂漠焼けした杏色の肌は快活そう。でもシャンと背筋を伸ばして書類に視線を落とすその瞳は、物静かで聡明な色も湛えている。……素敵な子だな……なんて考えていると、突然バシン! と背中に衝撃。
「って事だ。支度金は俺が預かるぜ?」
「え? はい?」
 しまった。いつの間にか話がどんどん進んでいたらしい。
 どうしよう、何にも聞いてない……。まさか彼女に見とれてたから、もう一回最初から……なんて言えないぞ。
 困ってあうあうしている僕を見て、何となく事情を察してくれてたのか受け付けの女の子がここまでの話を要約して教えてくれた。
 クスリと笑われたのが何だか心を見透かされたようで恥ずかしいけど、ありがたい。
 彼女の話によると、とりあえずどうやら僕のハンター登録は認められたらしい。
 例の『移国証』の問題は、船長が僕の身元引受人となる事でOKになった。
「分かったか譲ちゃん? つう事だからな、契約金は俺が預かるって事で良いな?」
 僕の肩を抱き、二カッと笑う船長。良いも何も、僕には選択権なんて無いのを知ってるくせに。
 3枚目の書類を書き終えた所で、船長お待ちかねの支度金がテーブルの上に置かれた。
 まだ何も実績を残していない人間に支払われる額としては、十分過ぎる額だ。故郷での質素な僕の生活なら、三ヶ月位は生きていけそうだ。
 おぉと驚く僕の目の前で、支度金はひょいと船長に持っていかれてしまう。
「まあ任せとけ。俺がこの金でバッチリ装備買って来てやっからよ。譲ちゃんは受け付けの姉ちゃんにこれからの事、しっかり聞いとくんだぜ? じゃな!」
 船長は現金を手に入れた途端、あっという間に酒場から立ち去ってしまった。まさに現金なもんだね。
 打ち合わせ通りの事とは言え、余りにもあっさりとした別れ。
 何だかんだで、結局かなりお世話になってしまったのだから、せめて感謝の一言でも伝えたかったのにな……。
「――良いんですか?」
 受け付けの女の子が怪訝そうに聞く。傍から見れば、どう見ても僕が船長に支度金を持ち逃げされてる様にしか見えないもんね。うん、でもそれ大体合ってる。
 ――なんて言う訳にもいかないか。何とか取り繕わなくちゃ。
「はは。あの、僕あまり武器とかに詳しくないのでその……お願いしてあるんですよ」
「詳しくない……んですか? これからハンターになる方が?」
「あ……え、えと……その」
 忘れてた……言い訳ってやつが、僕は苦手だったっけ。それでいつも殴られて来てたんじゃないか。よけいに怪しまれてしまったぞ。
 こんな時、僕の口から出る次の言葉は決まっている。
「ご、ごめんなさい」
 あやふやな謝罪の言葉。何に対して、何を謝っているのか自分でも良く分からない。
 今までの経験上、こんな時は十中八九疑惑の眼差しを向けられてる。だけど彼女は違った。そこにあったのは、意外にも微笑み。
 さっきまでの事務的な笑顔とは違い、随分と年相応で柔らかい笑顔だった。浮かんでいる感情は……好奇?
「ねね。トラント君って何歳なの?」
「へっ……ぼ、僕?」
「うん。あっ、あたしはリッタ。十七になったばっかり。モガから来たんだ。モガって知ってる? ここから砂海をね、ずーっとずーっと、ずううぅーっと南に下ると海に出るの。その海に浮かんでる、小さな村。ね、あなたは?」
 リッタと名乗った女の子は目を輝かせ、まるで連射式ボウガンの様に捲くし立てる。免疫の無い僕はオドオドと情けなく、
「お、同じ……かな」搾り出すように答えた。実は僕は自分の誕生日を知らなかったりする。
「わ、同い年なんだ! へへへ、何かちょっと嬉しいかも。それにしても、ドンドルマからって、随分遠くから来たんだね。飛行船で来たの?」
「い、いえあの、砂上商業船で……」
「ええっあんな遠くから? ホントに?! ……じゃあ、随分げぇげぇやったんじゃない?」
「ん、ま、まぁ……」
「って、あれ? ドンドルマってハンターのメッカだよね。何だってわざわざこっちに?」
「ん……んん……」
 船長が居なくなると、突然受付の女の子……リッタの態度がコロリと変わったので、僕は戸惑った。いや変わったと言うより、見た目通りの年齢に戻ったという感じなのかも。
「……あ~ゴメンゴメン、詮索するつもりは無いから安心して。『ハンターの過去は問わない』ってのが、ハンターズギルドの規則だしね」
「そうして貰えると助かりま―」
「で、いつからロックラックに?」
「……」
「なによー。そんなあからさまに渋い顔しなくても良いでしょー? これは私の個人的興味なんだから!」
 同年代の女の子に個人的興味を持たれるのは、悪い気はしない。でも今の僕の立場としては、あんまり突っ込まれては困るのだ。
 なんせ支度金詐欺を働こうとしているのだから。
 約束のお金が船長に渡った以上、ここに居る必要は一切無い。だから僕としては一刻も早くこの場を立ち去りたくて仕方がないのだけれど、どういう訳か受付の女の子に興味を持たれてしまった。
 この後も色々と質問攻めに会い、言い訳の下手糞な僕は、何度か危なく本当の事を喋ってしまう所だった。
「ふーん。じゃあハンターどころか、今までアプトノス狩りもした事無いんだ」
「あ、あの……良いんですか僕ばっかりに構ってて。結構カウンター忙しそうですよ?」
 何とか話をはぐらかしたくて言ったのだけれど、実際カウンターにはクエストを受ける為に、ハンター達の姿が増えてきていた。
 それぞれ個性のある鎧に身を包んだハンター達。彼らを、まるで吟遊詩人が唄う冒険譚の英雄の様に崇める人も居るけれど、僕にとっては粗暴で野蛮な荒くれ者にしか見えない。
 非合法な荒くれ者が野盗や海賊達で、合法的な荒くれ者がハンター達。その位の価値観しか、正直持っていなかったりする。
 僕に荒くれ者が勤まるとは、欠片も思えない。
 後に並んでいるハンターの視線が痛い。やっぱり早く立ち去るのが懸命だ。
「そ、それじゃ僕はこれでっ」
「あ! ちょ、ちょちょちょっと!」
 リッタの声を背に、僕は脱兎の如く酒場から逃げ出した。

――――――――――――――――――――――

「うぅ、全力疾走、……き、きつ……うぷ。もうだめ」
 二日酔いの頭痛と砂漠の熱気に中てられた僕は、大した距離も進まず、すぐにヘロヘロとへたり込んでしまった。
 駄目だ……今はもう動きたくない。僕は近くにあった木陰に転がり込むと、樹の幹に頭を預けて寝転がった。
 大通りの脇だったので道行く人達がジロジロと見ていたけれど、もうそんな事気にする余裕も無い状態。
 二日酔いなんて、生まれて二回目の経験だ。一回目の時は「もう二度とお酒なんか飲むもんか」って思ったっけ。
 今思ってる事は、もちろん「もう絶対お酒なんか飲むもんか」だ。
 ……でも、昨夜のお酒は楽しいお酒だった。大勢の陽気な大人達に混じって、肩を寄せ合い笑い、騒ぐ。そんなの初めての経験だった。
 知らない人に、がははと笑いながら力任せに頭をバンバン叩かれたり、クル何とかと言うモンスターを狩りに行った時の武勇伝を延々聞かされたけれど、楽しかった。
 僕の苦手な、くっさい苔チーズの早食い競争なんかにも巻き込まれたっけ。勝負の後皆で息を吹き掛け合って、「ぅわお前くっせ!」なんて言い合った。可笑しくて笑い転げた。楽しかった。
「でもやっぱ……お酒は苦手だ……うぷ」
 うう、参ったな。ハンター登録している時は結構平気だったのに。走ったのが良くなかったみたい。
 うぁあ。空がぐるぐる回り始める。
「だ、ダメだ……ちょっと、寝よ……ぅ」
 回る世界をシャットダウンし、僕は目を閉じた。
 木漏れる太陽の光が瞼裏にオレンジの光を踊らせ、だらしない僕を笑っている。
 オアシスを渡る風は頬に涼しく、少しずつ僕の頭痛を和らげていくのだった。

「んん……」
 どれ位の時間が経ったのだろうか? 僕は額のひんやりとした感触に気づき、目を覚ました。
「あ、やっと起きた」
「へ? ……げっ! き、君はっ」
 寝ぼけた視界の中にひょっこりと現れた顔は、リッタだった。
 僕は驚いて跳ね起きた。だってそうでしょ? 彼女には仕事もあるのに、まさか追いかけて来るなんて思いもしなかったのだ。勢いが良すぎて、危なくリッタと頭をぶつけ合いっこする所だった。
「げっ! って何よぉ。失礼しちゃうわね。介抱してあげてたのにぃ」
「え? あ……」
 きょとんとする僕の膝の上を、リッタが口を尖らせながら指差す。そこには濡れたおしぼりが乗っかっていた。
 ――そうか。僕の額を冷やしてくれていたのは、これか。僕が飛び起きたから、落っこちたんだな。
 リッタが乗せてくれた……んだよな、きっと。そうだとしたら、確かに「げっ」は失礼だったかも。
「え、えと……あ、ありがとう」
「どう致しまして♪」
 にっこりと笑う彼女の笑顔が何だか妙に近い気がして、同年代の女の子にあまり免疫の無い僕は、さり気なく距離を取った。
「どうしたんですか? こんな所で」
「あー。また失礼なんだー。君が心配だから追いかけて来たに決まってるでしょー」
「えっ……?」
「なーんて嘘ですよーだ。今日はたまたま午後から仕事がお休みだったの♪」
「そ、そうなん―」
「有意義に午後の休暇を楽しもうと思って、食材屋で美味しいシモフリトマトを買って帰ってたら、道端に屍が転がってるじゃない? もーあたしビックリしちゃってさ!」
「屍ってそん―」
「で、良く良く見てみりゃ、その屍ってさっき知り合ったトラント君じゃん? だもんだから、あたしってば更にビックリ! やー、あたしってね、困ってる人とか放っておけない性質なの。心優しいのよねー。根っこの部分が。だもんでわざわざほら、こうして桶に水まで用意して、君が熱射病に掛からないように介抱してあげてたって、わ、け、さ♪」
 僕の相槌なんて有っても無くてもお構い無し。……あれだね。会話したいんじゃなくて、喋りたいだけなんだね。うん。
「――それで、何で道端なんかで寝てたの?」
 一人で喋り続けるって凄いよね。僕には到底まねは出来そうにない。
「……もしもし?」
「………………」
「……ねえってば!」
「うえぁいっ!? な、何?」
「もう、ちゃんと人の話聞いてるの?」
 ああびっくりした。またてっきり一人で喋り続けているもんだと思って、すっかり聞き流してた……って言うか、『話を聞いてるのかー』なんて、君には言われたくないぞ。
「ちょっと二日酔いで気持ち悪くなったから涼んでたんだ。そしたら、そのまま寝ちゃってたみたい」
「何それ、なっさけないなぁ。自分の部屋まで我慢できなかったの?」
「その部屋が無いから困ってるんじゃないか」
「ふぇ?」
「いやだから……ぁ……」
 しまった。うっかり本当の事を言ってしまった。どうしよう、怪しまれちゃっただろうか? 
 いやでもハンターを志す人達って、何だかんだで色々訳ありの人が多い筈。泊まる所すらない浮浪者だからって、いきなり支度金詐欺を疑われる事はないっ……と思う。
「部屋が無いって? どゆ事?」
「えぇと、その……僕…ほら、ここに来たばかりでしょ?」
「うん。それさっき聞いたから知ってる」
「だからその、まだ慣れて無いからさ」
「それで?」
「それでって……。慣れてないと、色々戸惑うというか……」
「……ふうん? ……で、まだ街の様子が分らないから、泊まる所が無い?」
「そ、そうそれっ。うん、そうなんです」
「へー。あーそう。ふーん」
 リッタは最初疑うと言うよりも「何言ってんの?」と言う感じで、キョトンとしていた。
 それが段々と、僕が喋れば喋るほど、どんどんと機嫌が悪くなって行っている気がする。何でだろう?
「あ、あの……リッタ?」
「トラント君ちょっとちょっと。耳貸してみ?」
「な、何?」
 ちょいちょいと手招きをするリッタ。口だけが笑ってて、目がちっとも笑ってない。
 もの凄ぉく嫌な予感がして怖いんだけれど、断るともっと怖そうなので、恐る恐る耳を近づけてみた。
 いきなり大声出したりしないでよね……とビクビクしていると、いきなりギューッと耳を引っ張られた。
「い、痛たたたたっ。ちょ、ちょっとリッタ?!」
「うるさい。ちょっとこっち来なさい!」
「痛い、痛いってばっ。行く行く。付いて行くから、放してよっ」
「全く。本っっ当に人の話聞いて無いんだからっ」
「へえぇ? 何の話だよぉ~っ」
 僕は訳も分らないまま、悪戯をして怒られる子供の様に、そのままズルズルとリッタに引き摺られて行くのだった。

「はいっ。ここが君の寝泊りする所!」
「え……?」
 人でごった返すメインストリートを、耳を引っ張られたまま抜け、クスクスと街行く人に笑われながら辿り着いた場所は、郊外の宿屋街だった。
 複数の宿が立ち並ぶ中の、一番小さくて、一番年季の入ってそうな古い宿屋。その前でリッタは腰に手を当て、ここが僕の宿だと言った。
「で、でも僕は――」
『尚、ハンターと認定された方は、当ギルドの用意した無料宿泊施設をご利用頂く事ができます。また、順調に仕事をこなし、ハンターランクが一定以上に上がられたハンター様には、別途有料のハンター様限定、特別待遇宿泊施設もご用意致しておりますので、どうぞご利用下さいませ』
 リッタは営業スマイルを浮かべてそう言い終えると、コロリと表情を変えて頬を膨らませた。
「ってあたしが説明してたの、ちっっっとも聞いてなかったんでしょ!?」
「えぇっ! そ、そうなんだ。知らなかっ」
「知らなかったんじゃなーい! 君が聞いてなかったんですーっ」
「ご、ごめん」
「むーっ。……ま、分ればよろしい。それじゃ、部屋に案内してあげるよ」
 頬を膨らませいてたリッタは、またコロリと表情を変えて笑う。
「それじゃ、部屋に案内してあげる。着いといでー」
 そう言って、慣れた足取りで宿の廊下をスイスイと歩いて行くリッタ。その後ろを着いて行きながら、僕の胸は高鳴っていた。
「さ、ここが君の部屋」
「僕の……部屋」
「……どうかしたの?」
「ん? なんでもないよ。はははっ。うん、入ろう入ろう!」
 僕の部屋……だって。すごいや。
 僕はリッタと一緒に部屋に入り、部屋の利用規約について話を聞いた。
 今度はちゃんと、きちんと聞いた。
 一通り話しが終わったので、リッタにシモフリトマトを分けて貰い、塩をふって食べた。
 リッタは「明日は必ずカウンターに顔を出すようにね!」と、シモフリトマトの汁を飛ばしながら、何度も僕に念を押した。
 これ以上疑われたくなかったので、僕は素直に頷き明日の約束をした。
 女の子と約束……なんて考えると、僕にとっては一大事なんだけど、リッタにとっては只の仕事の一環なんだよね。
 それでも楽しく小一時間程お話をして、リッタは帰って行った。
 リッタが居なくなると、部屋の中は一気にシンと静まり返った。街の喧騒の遠さが、ここが郊外である事を教えてくれる。
 ふぅと一息吐き、ベットに腰を降ろして、僕はこれからの生活の拠点となる部屋の中を見渡した。
 僕の様な宿無し新米ハンターが生活する、下級ゲストハウス。んん、ハウスっていうか、馬小屋に近いかも。
 馬小屋に仕切りを作り、ベットと机と荷物箱を放り込んだらこの部屋になる。その証拠に、床には藁が沢山散らばっていた。
 そしてその藁を一箇所に盛り上げてシーツを掛けたのが、ベット。机は家具に使用できない木切れを組み上げただけの、簡単な代物。足は真っ直ぐじゃない。
 カタダケで編んだ大きな荷物箱は黒ずんでいて、随分と使い古されているのが解かる。
 お世辞にも宿屋の一室……とは呼べない質素な小屋。でも不満は一切無かった。
 風雨が凌げて、眠る為の布団とベットがあるのだ。これだけでもドンドルマに居た頃よりも人間らしい生活環境と言えるのだから。
 何より無料だしね。計画も無しに故郷を飛び出した僕に、文句なんてある訳がない。
 しかしそれでも驚いたのは部屋の仕切りだ。何と薄い布切れ一枚である。防音どころか隣は丸見えで、視界すら遮蔽されていないのだ。
 これでは共同部屋と何ら変わらない気もする。まあでもプライベートなんて昔から無かったから、これも慣れっこだ。
 願わくば隣に住んでいるハンターさんが、まともな人である事を祈りたい。
 仕切りの布に近づき、そっと隣を覗いてみた。やはり僕の部屋と大差ない部屋がそこにはあった。
 ベットのシーツはまっすぐで、机の上には何も無く、床に散らかった藁にも人が歩いた気配は無かった。
「空き部屋……かな?」
 と呟いた瞬間、ド派手に扉を開け放つ音が響いたかと思うと、それに負けない大きな声が、僕の心臓をギュッとしめつけた。
「いやーっは! 懐っつかしいじゃねえかこのオンボロ小屋め! ははは!」
 最初に扉から現れたのは、放り投げられた背負い袋。ヒューっと弧を描き、ボスンとベットの上に落ち、藁を撒き散らした。
 続いて長身でガッチリとした体格の、若いハンターさんが現れた。若いと言っても、僕よりは年上だと思う。二十五・六歳位かな。燃える様な赤銅色の髪が印象的だ。
 若いハンターさんはドカドカと大股で室内を横切り、奥の窓を開けた。薄暗い室内に射し込む砂漠の強い日差しが、ハンターさんの容姿をはっきりと映し出す。
 厚い胸板と、引き締まった腹筋。そのシルエットが、シャツの上からでもはっきりと分る。袖から露出した腕は逞しく隆起し、まさにハンターと呼ぶに相応しい体躯の持ち主。
 短くまとめた赤髪に紺青色の瞳。肌の色は僕と同じで白かったけれど、凛とした闊達な表情にはひ弱さは微塵も無くて、僕とは正反対。口角をくいと吊り上げて、嬉しそうに窓の外を眺めている。
 男の僕が見ても、魅力的な笑顔だった。そんな笑顔が不意にこちらを向いたら、誰だってドキッとして慌てふためくでしょ? だから僕の声が上ずってしまったのは、けして情けない事なんかじゃないんだ。
「ぃよ! これからヨロシクな。お隣さん!」
「うぁぃ? ああ、あっ。よ、よろしくですっ」
 若いハンターさんは白い歯を輝かせながら、僕に右手を差し出した。薄い仕切り布がそれに合わせて僕の方に揺れる。
 勢いで差し出した僕の右手を、ハンターさんは布越しに力強く握り返す。何となく負けたくなくて、僕も思い切り握り返してみたけれど、ハンターさんは顔色一つ変えなかった。
「俺ナラノ。あんたは?」
「ぼ、僕は、トラント。ここには来たばっかりで……よろしく」
「おうっ、よろしくな。で、トラントは今ハンターランクいくつだ?」
「ラ、ランク? ……ええとその、今日登録したばかりだから……」
「おっ、一緒一緒。俺も今日登録なんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。ルーキー同士仲良くやろうぜ? なっはっははは!」
 ちょっとばかり驚きだった。風貌といい、我が家に帰ってきた様な素振りといい、もうすっかり熟練のハンターさんの様に見えたから。
 それに、さっき「懐かしい」とか言ってなかったっけ…?
「よし、じゃあ明日早速一緒に行こうか!」
「はいっ! って……え? ど、どこに?」
「どこにって……ははは! おっもしれぇなあトラントは! 狩に決まってんだろ。仕事仕事っ」
「ああ! あ、あはははは……」
「よし、決まりだな! じゃあ明日、陽が昇ったら起こしてくれよな。じゃ!」
「え、あ、は……はいっ」
 ナラノさんは一方的に捲くし立ててウィンクを飛ばすと、着の身着のままベットに倒れ込み、あっという間にぐっすりと眠り込んでしまった。凄い早業だ。
 さっきまでの賑やかさは何処へやら。驚くほど静かになった室内に、僕はまた一人ぼっちになった。
 リッタと言いナラノさんと言い……何だろ。ロックラックの人達ってば、皆こうなのかしらん?
「ふぅ……」
 西の空は茜色に染まりつつあったけれど、寝るにはまだ早い時間だ。
「さりとてやる事もなく……うーん。これが自由……なのかな?」
 もっともらしい事を独り語ちながらベッドに腰を降ろすと、思いの他ズシンと来る疲労感。
 ここ数日間で、僕の人生は目まぐるしく様変わりをした。その上慣れないお酒で二日酔いと来てるんだから、疲れてない訳が無いか。
「頑張って寝よう……」
 僕にとっては高級な、藁のベットに体を預けると、思いの外睡魔はあっさりと襲ってくるのだった――。

 昨日と違い、きちんとベットで眠ったお陰だろう。顔を洗い、軽く寝癖を直すと、もうすっかり目は覚めていた。
 薄い仕切り布越しに隣の部屋を覗いてみる。ナラノさんはまだ寝ているみたいだ。予想に反して、凄く寝相が良い。まっすぐ寝てる。
 このまま起こさず、道具屋さんに丁稚奉公のお願いに行こうかなとも考えた。けれど、屈託の無い笑顔で握手をしてくれた感触が、まだ右手に残っていた。
「……独りでやるより、生き残る確立も上がるよね」
 言い訳の様に独り言ち、僕はナラノさんにおはようと声を掛けた。

 ロックラックの朝は早かった。まだ早朝だと言うのに、商店は軒先に商品を陳列し、沢山の商人やハンターが店番と値切り交渉をしていた。
「朝から活気がありますね。ここは」
「ああ。ハンターには昼も夜も無ぇからな。いつだって賑わってるぜ」
 ナラノさんは食材屋の前に並ぶミミパンを二袋買い、一袋を僕にくれた。
 店に入り、食材を買い、店を出る。
 ただそれだけの事なのに、賑わう人々の目は今、ナラノさんの一挙手一投足に注がれていた。
 何故か? ナラノさんが絶世の美男子であるから……という訳でも無い。それなら一緒に居る僕だって、こんなに居心地が悪い筈が無いから。
 っていうかむしろ、その『顔』が見えていない事が、皆の好奇の目を集めているのだ。
「あ、あのぅ。ナラノさん」
「ん? どした」
「なんでその、兜だけ被ってるんですか?」
 思い切って聞いた。朝、部屋から出て来た時に、勇気を出して聞いておくべきだったんだ。
 でもナラノさんの態度はあんまりにも自然で、ボケを狙ってやっている風には見えなくて……。
 だから小心者の僕は突っ込みを入れる事も出来ず、変な風体のナラノさんと一緒に町までやって来てしまったのだ。今は後悔してる。
 ナラノさんは、兜だけを被って部屋から出てきたのだ。首から下は僕と一緒で、薄手のアンダーウェアと麻のズボンなのに。
 鎧と一緒に装備していれば良いのだろうけれど、兜だけ被った人間ってのは、こうもシルエットのバランスが悪いものなのか。
 更にその兜のデザインが、何と言うか……酷い。
 頭の天辺に鶏のトサカの様な、金属の飾りがついているのだ。しかもそれが紅白の縞模様で、やたらと目立つ。
 人混みに紛れてても、ナラノさんだけは絶対に発見できる自信がある。
 更に、フルフェイスタイプのフェイスガードをきっちりと下げているものだから、人相が全く分らないと来ている。
 更に更に、そのフェイスガードが道化師のマスクを模したような、薄ら笑いを浮かべたデザインと来れば、もう怪しい事この上無い。
 誰だって振り返る。見てないフリしてチラ見する。僕だってそうする。
 街の人達の視線に耐え切れず、勇気を出して聞いた結果が――
「かっこいいだろ?」
 これだもん。信じらんない。
「……カッコ良くないです」
「うっそお」
「うっそでないです! もー。ほら皆見てるじゃないですかっ」
「だっろぉ!? カッコ良いから見らr――」
「違いますっ」
 僕がビシッと否定してあげたのに、ナラノさんは僕の肩にがっしりと腕を回して、豪快に笑った。
「そう拗ねるなって。お前だってな、俺とガッチリ狩りしてりゃあ、カッコいいのが手に入るって! なっははははは!」
 ――無理に否定するのはよそう。この人、多分マジだ。
「……そうですね。じゃ、行きましょうか……」
「おおっ! いざ行かん、冒険の旅へってな! はははははっ」
 ナラノさんは天に突き上げた右腕をグルグルと回しながら、調子の外れた鼻歌を歌いながらハンターズギルドに歩み出した。
 もちろん周囲の視線とヒソヒソ話を独り占めだ。もちろん僕は離れて歩いた。
「何グズグズしてんだ。行くぞトラント君!」
 くっ。お願いだから名前は呼ばないで。
 ギルドカウンターに辿り着くなり、遠慮の無いリッタの爆笑が僕達を迎えた。
 ナラノさんは自分が馬鹿にされてるなんて、多分微塵も感じてない。爆笑するリッタに何故かポージングで応えているもの。
 駄目だ。この二人に構っていたら、いつまで経っても仕事の契約なんてできやしない。いや、下手をしたらこのまま飲み会に突入しかねないぞ。
 僕は二人から離れ、カウンターの一番隅っこの受付で、こっそりと「キノコ採集」のクエストを受けた。
 太陽は高く煌々と照りつけ、乾いた砂を運ぶ熱い風が僕の髪を梳いていった。

 ――これが、僕のハンターとしての人生の始まり。今思い返してみても、何とも平和な始まり。
 あの時の僕には、まさか僕がモガの村を救う英雄になるだなんて、微塵も想像できなかっただろう。
 その後の冒険譚は、また機会があれば話したいと思う。
 それじゃあ皆、お元気で。また、どこかの狩場で会えると良いね。



どや! 見事な打ち切りラストっww
ここまで読んじゃった皆様、お疲れ様でした&ありがとでした!
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テーマ:ひとりごとのようなもの - ジャンル:日記

この記事に対するコメント

ベアチョーチョカワイスw

>>cvさん
モンハン小説、そういえば書いてると言ってましたなw
読ませてもらったですよ。面白い! 普通に続きが読みたくなるw
ここで打ち切りはもったいない! クルペッコ討伐くらいまでは書くべき!w
トラントくんはいきなりナラノにクルペッコに連れてかれたらいいよ。cvさんが初オンした時のようにww
しかし、このナラノが俺のキャラ? 性別かわっとるがなw
しかもなぜ兜オンリーの変態キャラに?wwwww
【2010/07/31 22:21】 URL | だいぶつ #gIYQI5Sw [ 編集]


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岡山に生息。
カレーは混ぜてから食べる派です。
「ひぐらしのなく頃に」の二次創作を中心に、ショートストーリー(SS)を書いています。
「うみねこ」もちらほらとやってます。
いずれオリジナルも書いてみたいと野望を持っております。

メアド : kdksf1@mail.goo.ne.jp
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